電気のおはなし
1-4 直流回路とは
直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
電池は、充電できない使い捨ての一次電池と充電すると何度も使用できる二次電池があります。
充電することのできない使い捨てになる一次電池の乾電池は、リモコン、懐中灯、目覚まし時計や充電操作ができない幼児が使うモータで動作する玩具などに使われています。ボタン電池は、腕時計や補聴器のように消費電力で動作する小型の機器に使われています(図1)。
- 乾電池
- ボタン電池・リチウム電池
図1:一次電池の用途例
一方、二次電池は、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、ノートパソコンなどの携帯情報機器や、携帯オーディオ機器、携帯ゲーム機器、電動工具など充電すると何回も使用でき、ランニングコストを低く抑えることができる用途に使われています(図2)。
図2:二次電池の用途例
照明器具では交流が流れて点灯する白熱電球、蛍光灯などが主流でした。 ところが省電力、長寿命などの特徴を備えたLED照明器具の商品化が進み、 今までの照明器具にとって代わりつつあります。LED照明器具に使われているLEDは、直流が流れて発光する直流回路で動作する素子です(図3)。 そこで商用電源の交流に接続して使われるLED照明器具では交流をスイッチング電源でLEDの動作に適切な直流電圧に変換しています(図4)。
図3:LEDスポット照明器具の例
図4:スイッチング電源の構成例
最近の自動車には直流で動作するエンジンコントロールユニット(ECU)を筆頭に多くの制御ユニットが搭載されており、直流回路で結ばれています。
モータで走行する電気自動車以外の自動車ではスタータにバッテリーから大電流を流して回転させてエンジンを始動しています。そこでバッテリーからスタータへの直流回路の配線には太い電線が使われています。
都市部のドライブでは頻繁にスタートストップを繰り返すので燃料の節減とCO2排出の削減につながる アイドリングストップシステム(ISS)機能が新車に義務付けられる方向にあります。 エンジンの始動と停止の頻度が高くなるので耐久性を向上させた高性能なスタータと内部抵抗を低減して大電流をスタータへ流すことができ、充放電への耐久性を高めたバッテリーがISS車に採用されています(図5)。
図5:ISSバッテリーの充電と放電
大容量の蓄電池設備や電源設備など大電流が流れる直流回路の配電には抵抗値が低い太い電線や大電流が流れても電圧低下が低く発熱も小さいブスバーとよばれる配線部品が使われています(図6、7)。
図6:ラミネートブスバーの例
図7:銅板ブスバーの例
直流回路は、オームの法則がそのまま適用できる場合が多いのでわかりやすいのですが回路中に使われている部品の特性を知って回路を見ることが重要になります。
『電気のおはなし』の目次
第1章 電気回路
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1-1回路とは漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。
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1-2回路の種類電気回路には大電流、大電力の発電系、送電系からの大工場、大型ショッピングモールなどの受電系、一般家庭の受電系、パソコン、スマホなどのプリント基板のパターンを流れる小電流回路、ICやLSI内部の微小電流まで扱う電流の大小により多くの種類があります。
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1-3交流回路とは交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。
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1-4直流回路とは直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
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1-5並列回路とは工場の電動機や照明等の負荷への配線、オフィスの複写機、パソコン等の負荷への配線、住宅内のエアコン、家電品等の負荷への配線など電力会社から受電した電気を負荷へ供給している配線回路のほとんどが並列回路を形成しています。
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1-6直列回路とはスマホ、ノートパソコンなどの携帯電子機器ケースの内部には充電できる二次電池のホルダーが収納されています。 中
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1-7分岐回路とは退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。
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1-8遮断回路とは地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。
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1-9プリント配線板とは電子回路や電気回路の配線の一部を印刷して展開した板をプリント配線板とよんでいます。
第2章 電気の測定
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2-1電気回路測定の心得電気回路の測定に入る前に測定する周囲の電場環境や磁場環境など周囲環境が電気回路や電子回路にどのような影響を与えているのかを調べておきたいと思います。
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2-2電圧の測定電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
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2-3電流の測定電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。
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2-4抵抗の測定抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。
第3章 回路計
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3-1テスター(回路計)とはテスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。
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3-2アナログテスターの使い方アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみ
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3-3デジタルテスターの使い方デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。
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3-4自動車用テスターとスキャンツール現在の自動車は電気回路や電子回路やマイコン、センサーにより電子制御されています。今後、自動運転化が進むにつれてこの電子制御化傾向はさらに加速していくものと思われます。
第4章 電気用品
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4-1電気回路と関係のある法律とマーク電気回路と関係がある国内と海外の安全に関する法律や安全マークに数回にわたって解説していきます。
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4-2JIS日本工業規格とは今回は、電気回路に関係している電気設備、電気用品、電気部品、電気材料や機械部品などの標準化を定めている日本工業規格(JIS:Japan Industrial Standards)(以下JIS)について調べていきましょう。
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4-3電波法と技適マークについて電波を公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として定められたのが電波法です。多くの政令や省令に詳細が定められています。
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4-4人工知能(AI)とは準備中
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4-5CEマーク準備中
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4-6ULマーク準備中
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4-7CSAマーク準備中
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4-8FCCマーク準備中
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4-9VCCIマーク準備中
第5章 発電
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5-1発電の種類準備中
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5-2水力発電準備中
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5-3風力発電準備中
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5-4火力発電準備中
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5-5地熱発電準備中
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5-6バイオマス発電準備中
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5-7原子力発電準備中
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5-8内燃機関発電準備中