遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第3章 ポンプの据付けと試運転

3-5 ポンプの回転方向の確認

ポンプ内及び吸込配管内の空気抜きが終わり、ポンプの運転に必要になる冷却水などのユーティリティの供給を開始すれば、ポンプは始動できる状態にあります。ここで、回転方向の確認を行います。 具体的には、面倒でもカップリングボルトを外して、駆動機単独で数秒回転して目視で回転方向が正しいかどうかを確認します。

据付け現場が広く、多くの工事業者が行き来しているところでは、電気関係の業者はポンプが始動できる状態でないにもかかわらず、独自に回転方向を確認することがあります。とても危険なことなので、このようなことは避ける必要があります。

回転方向が正しいことを確認したら、最終の心出しをします。そして、試運転を開始します。

ここでは参考として、ポンプを外から見たときの正規の回転方向の見分け方を紹介します。ポンプの回転方向は、カップリングやカップリングの近くに矢印で示されています。しかし、長年経過すると矢印が劣化したり剥がれ落ちたりして見えなくなってしまいます。そのような場合にも役立ててください。

ボリュートをもったケーシングと羽根車の回転方向に関する関係を図3-5-1に示します。同図(a)、(b)及び(c)ともに同じで、羽根車は反時計方向に回転します。そして液はケーシング内に矢印で示したように流れ、吐き出されます。次に、図3-5-2を見てください。 同図(a)のようなポンプで、"A"から見て同図(b)のようになっているケーシングの場合、回転方向はどうなるでしょうか。同図(b)において、反時計方向に回転するのが正規です。つまり、回転方向は駆動機側から見て時計方向になります。 図3-5-3(a)(b)の場合も同様で、正規の回転方向は駆動機側から見て時計方向です。

図3-5-1 ケーシングと羽根車の回転方向の関係

図3-5-1 ケーシングと羽根車の回転方向の関係


図3-5-2 外から見たときの回転方向

図3-5-2 外から見たときの回転方向


図3-5-3 外から見たときの回転方向

図3-5-3 外から見たときの回転方向

このように、ボリュートを持ったポンプの場合、ケーシングを外から見て、回転方向が分かります。そして、モータ駆動のとき、具体的に回転方向が正しいかどうかを確認するには、面倒でもカップリングのボルトを外してモータだけを始動して確認します。

それでは、ボリュートでないポンプの場合はどう確認するのでしょうか。ケーシングの外観からでは回転方向を特定できません。このようなポンプでは、やはりカップリングやカップリングの近くに矢印で示された回転方向に頼ることになります。 長年経過して矢印が見えなくなってしまったら、ポンプメーカから提出された外形図などから回転方向を把握します。そして、カップリングのボルトを外してモータだけを始動して確認します。

駆動機がモータであるポンプでは、前述のような方法で回転方向を確認することができます。しかし、キャンドモータポンプなど回転部分が外部に露出していないポンプはどうやって確認するのでしょうか。 キャンドモータポンプでは、図3-5-4に示すように、端子箱に付いている表示器で回転方向が正常かどうかを表示する機能を備えたものがあります。このような場合には、表示器で確認することができます。表示器がない場合には、取扱説明書の中に書いてある「モータ結線図」に頼るしかありません。

図3-5-4 キャンドモータポンプの回転方向

図3-5-4 キャンドモータポンプの回転方向

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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