治具・取付具の正しい使い方
2-2 タップを立てるには
それでは次に、タップの先端を垂直に立てるにはどうしたら良いでしょうか?
下穴は加工物の面に垂直にあいています。(何らかの理由でわざと傾けることもありますがそれは例外です)。もう一度、「2-1 タップ加工とは」の 写真3を見てみましょう。このように加工物はバイスに固定されています。無造作に固定されているようですが、よく見ると、色々なところに注意が払われています。
「2-1 タップ加工とは」より写真3
まず最初に、バイスは工作テーブルにしっかりと固定されています。そしてバイスの口金の高さは水平です。この口金に平行に加工物が固定されています。そしタップは垂直に立てられ、タップハンドルは水平になっています。
写真1を見てください。こうすると、タップやタップハンドルと、周囲の景色・・・工作部屋の窓枠や建具、棚などのエッジを透かして合わせれば容易に垂直や水平の目印が得られます。タップ作業の名人はこうした背景の垂直や水平の基準を見つけて、それに合わせられるように、加工物も正確に水平・垂直になるようにバイスで固定しているのです。
写真1
ここまで話を進めてくるともう話はおわかりですね。治具の基本的な要素がこのタップ作業にすべて含まれているのです。
平面に垂直にタップを立てるだけなら、写真2のような簡単なタップガイドが役に立ちます。透明なアクリル樹脂のブロックに丁度タップの軸が入る穴を垂直にあけただけの簡単なものですが、下穴の位置にタップを垂直に案内することができます。
写真2
2-3.円筒部にタップを立てるには
次に、円筒面に雌ネジ加工をする場合を考えましょう。
この場合は下穴加工も一工夫必要となります。下穴を円筒面に垂直にあけるためには下穴の位置をけがくときに、写真3のように同時に下穴の水平と垂直の目印となる線を入れておきます。
写真3
写真4を見てください。水平・垂直の目印があれば簡単ですね。この目印を頼りに、バイスに固定し、タップ加工するだけです。写真5のように円筒部分にきれいに雌ネジを加工することができました。目印が無いとどのように固定したらよいか見当が付きません。下穴加工もタップ加工も水平・垂直の目印が無ければ正確に加工することは困難です。しかし、テスト品なら線が入っていても良いのですが、製品にケガキ線が残っていると見苦しいので、加工手順と治具を考えることになります。
写真4
写真5
このように、タップ作業は決して無造作ではありません。
加工しやすいように、単にバイスに固定するだけでなく、水平・垂直の目安が得られるように注意深く作業が進められているのです。初心者がタップ作業を行うと雌ネジが傾いてしまうのは、こうしたことを知らないで闇雲に作業を進めた結果なのです。
『治具・取付具の正しい使い方』の目次
第1章 治具の基礎知識
第2章 タップ加工における治工具
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2-1タップ加工とはこの章では、工作物に雌ネジを切るタップ加工を実例として治具を考えていきます。
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2-2タップを立てるにはそれでは次に、タップの先端を垂直に立てるにはどうしたら良いでしょうか?下穴は加工物の面に垂直にあいています。
第3章 穴加工における治工具
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3-1穴加工のポイント一般的に、本格的な穴加工はドリルという刃物を使います。ドリルは写真1に示すように、2本のねじれ溝があり、先端角118°の切れ刃が対称に付いています。
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3-2卓上ボール盤の特徴と座標系電気ドリルはドリルをチャックで掴んで回転させる部分を作業者が手で持って行うため、ワークに対してドリルを常に直角に保つことができません。