照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第3章 照明のことが分かる講座

3-10 屋外用器具の種類

夜の景観や雰囲気を高める器具

屋外照明は道路、街路、広場などを安全な明るさにする目的で普及してきました。しかし今日ではそれに加えて夜の景観や雰囲気を高める照明が注目されています。そのため屋外用の照明器具が多品種にわたって開発されており、特にLED器具は従来光源用器具に比べ小型で省電力を可能にしています。さらに紫外線や赤外線が余り出ないことから樹木や芝・草花などの照明に使用しても虫が集まりにくく、また照明の熱によって植物を傷めるリスクも少なくなっています。

低位置型器具と低ポール灯

車道と歩道を区分したり、花壇や芝を明るくしたりする目的で使われる高さ1m以下の器具を低位置型もしくはローポジション器具と言います。この種の器具は円筒状や四角錐の柱の頂部にガラスのコップが付いたようなデザインが多く、光が全般に拡散されるためどこから見ても器具の存在が目に入ります。また、器具近くに樹木や外壁があればそれらも照らすため、空間全般をほのか明るさにして賑わい性と安全性を表現します。(写真1)

(写真1 コップ形器具)

(写真1 コップ形器具)



一般に低位置型器具を連続配灯する場合、灯具の高さに対して3~10倍のピッチにすることが勧められ、ピッチが狭いほど光の連続性からより高い誘導効果も得られます。このような照明をアプローチライティングと呼びます。ただし灯具自体が見下ろしの視点で光って見えると、周囲が暗いほど灯具の明るさが目立ち、足元が暗く感じることも考えられます。そこで灯具の上部を遮光板のようなもので覆ったデザイン器具にすることで発光部が見えない分、路面を明るく見せることができます。(写真2)(写真3)

(写真2 見下ろしの視点で遮光されたLED器具)

(写真2 見下ろしの視点で遮光されたLED器具)



(写真3 アプローチライティング)

(写真3 アプローチライティング)



なお低位置型器具は灯具が地面に近いほど水溜まりの跳ねなどで汚れやすくなるので汚れによる照度低下を防ぐため定期的な清掃が求められます。

LED器具の中には光色(色温度)が変えられるものもあります。屋外は基本的に照度が室内ほど明るくないので、白い光は少し陰鬱な雰囲気になりやすいためできるだけ温かい光の電球色が望まれます。温かい光とか涼しい光と言っても光自体に温度を持っているわけではありませんが感覚的に感じるものがあるため、例えば季節で光色を変えてみるのも一考かと思います。

また色温度の異なる光を意図的に使い分けることで空間に奥行や広がりなどを演出することも可能なため、照度だけではなく光源の色温度についても関心を持つことが大切です。

なお低位置型より少し高さのある器具にロー(低)ポール型があります。器具の高さでいえばおよそ1~4m程で、少し広範囲を照らし出します。おもに庭の全般照明や住宅街、商店街の街路照明に使われます。(図1)

図1 屋外用照明器具1(W数は概略)

図1 屋外用照明器具1(W数は概略)



屋外用器具に求められる性能 

屋外用器具は屋内と違って雨風や埃などの悪影響を受けることがあります。そのため器具は基本的に防塵性と防水性を兼ね備えた構造であることが求められます。

IEC(国際電気標準会議)規格として、これらの防塵・防水性能を等級に分類し、保護の程度やテスト方法が規定されています。これに基づくIP(Ingress Protection)表示は世界で使用されていますが、IP00は何も保護されていないことを意味します。ここで第一示性数字(数字の左)が防塵性、第二示性数字が防水性能を表しており、例えばIP65の6は完全な防塵性能で、5はあらゆる方向からの水の直接噴流に耐えられる性能を持つ器具になります。因みに防塵性能では6が最高値です。また防水性能では8が最高値で、これは水没して使ってもよい器具のことで、したがって水中用照明器具はIPX8(Xは表現の必要がない場合に使う)になります。(表1)

表1 IP規格の概要 ※()内はJIS規格
表1 IP規格の概要

IP規格とは別に屋外用器具は錆の発生による器具の損傷を出来るだけ低減させるものでなければなりません。なかでも塩害による影響は地形などによって異なりますが一般に海岸線から内陸に500m~10kmまでが塩害地域とされ、また500m以内の場所で使用される器具は重塩害地域としてよりさびにくい素材と仕上げが求められます。

執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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