建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第2章 建築設備用配管材料の種類

2-11 多層複合配管材料(各メーカ規格)

既存の配管材料の他に、さまざまな規格(JIS・JWWA・WSP・SHASE-Sなど)には規定されていないが、「優れた特徴」を兼ね備えた「多層複合配管材料」、が各社で開発され、空調設備や給排水衛生設備の配管材として採用され普及している。

ここでは、それらの例の中で2例だけ紹介しておきたい。

(1)金属強化ポリエチレン管(スーパーエスロメタックス)

この配管材料は、通称:エスロンパイプとも呼ばれ、積水化学工業(株)の開発製品である。その特徴は挿絵に示す様に、「プラスチック材料」と「金属材料(アルミ)」からなる「多層複合管」である。最近では、「給水・給湯設備配管」から「空調設備配管」に至るまで、幅広く使用されている。高温・高圧で使用でき、「優れた耐食性」があり、「酸素透過」がないという特徴の他、取り扱いが簡単で「施工性」が良いなど、多数の長所を具備している配管材料である。この他に、保温材付きの「エスロンFC」もあり、この複合管の「専用継手」やワンタッチ継手として「メタキット」や「メタッチ」がある。

図-1 金属強化ポリエチレン管(スーパーエスロメタックス)の構造

2)三層構造管(ドライフレックス)

この配管材料は、通称:ドライフレックスと呼ばれ、(株)タブチの開発製品である。この材料は、挿絵に示す様に「高耐熱ポリエチレン」・「強化アルミパイプ(JIS H 4000)」・「高耐熱ポリエチレン」の三層で構成されており、「銅管」と「樹脂管」の備えた多層複合配管材料である。

従来の樹脂管に比べて、施工時間が短く、経済的でかつ環境にやさしいなどの特徴を具備している。配管施工法には、床配管工法・天上配管工法・先分岐工法があり、ドライフレックス本体の他に、「ワンタッチ継手(ドライタッチ)」・「プレス式継手(ドライフィット)」などを使用して配管接合をする。

図-2 三層構造管(ドライフレックス)の構造

なお、上記の両配管材料の施工方法(切断⇒加工⇒接続⇒施工手順など)については、それぞれ各メーカで発行している「取り扱い説明書」を参照してください。

第1章 建築設備配管材料の種類の掉尾になるが、配管材料選択にあたっての留意点を参考までに紹介しておきたい。

【ちょっと一言!】地球環境に最も優しい材料

日本では、その用途によって各種各様の配管材料が出回っている。これらの代表的な配管材料を『地球環境にもっとも優しい優しい配管材料』という観点から評価するとどうなるであろうか?その答えが表-1および表-2である。

管種としては、1.SGP、2.STPG sch40、3.VP、4.SUS(JIS G 3448)、5.銅管硬質Mタイプ(JIS H 3300)の以上5タイプを選び、表-1は管径別に「配管重量:kg/m」を元に、各種配管材料の「炭酸ガス排出係数」を掛けて、「炭酸ガス排出量:kg/C/m」を算出し「配管材料別・管径別炭酸ガス排出量」としてまとめたものである。

また、表-2は、「指数比較」をする目的で、表-1の各数値を「SUS(JIS G 3448)」の指標を1として、「配管材料別・管径別炭酸ガス排出量指数」としてまとめたものである。表-2より、各配管1m当たりの炭酸ガス排出量の浮くない順に並べると、「VP」⇒「SUS(JIS G 3448)」⇒「銅管硬質Mタイプ(JIS H 3300)」⇒「SPG」⇒「STPG sch40」となっている。配管用途を度外視すれば、地球環境に最も優しい配管材料はなにか?が容易にお分かりいただけると思う。

ただし、これらの配管材料の処理・リサイクルに要する「炭酸ガス排出量」は一切加味されていない。ちなみに、本表は、小生が「高砂熱学:施工技術センター長」時代にまとめた表である。

表-1 配管材料別・管径別炭酸ガス排出量

原単位[kg-C/kg] SPG STPGsch40 VP SUS(JIS G 3448) 銅管硬質M(JIS H 3300)
0.3911 0.3911 0.4922 0.3911 0.4904
配管重量 炭酸ガス排出量 配管重量 炭酸ガス排出量 配管重量 炭酸ガス排出量 配管重量 炭酸ガス排出量 配管重量 炭酸ガス排出量
サイズ(A) [kg/m] [kg/C/m] [kg/m] [kg/C/m] [kg/m] [kg/C/m] [kg/m] [kg/C/m] [kg/m] [kg/C/m]
20 1.69 0.661 1.74 0.681 0.31 0.153 0.529 0.207 0.49 0.240
25 1.43 0.950 2.57 1.005 0.448 0.221 0.687 0.269 0.69 0.338
32 3.38 1.322 3.47 1.357 0.542 0.267 0.98 0.383 1 0.490
40 3.89 1.521 4.1 1.604 0.791 0.389 1.24 0.485 1.4 0.687
50 5.31 2.007 5.44 2.128 1.122 0.52 1.42 0.555 2.2 1.079
65 7.47 2.922 9.12 3.567 1.445 0.711 2.2 0.860 3 1.471
80 8.79 3.438 11.3 4.149 2.202 1.084 4.34 1.697 4 1.962
100 12.2 4.077 16 6.258 3.409 1.678 5.59 2.018 6.9 3.384
125 15 5.867 21.7 8.487 4.464 2.197 6.37 2.491 9.9 4.855
150 19.8 7.744 27.7 10.833 8.701 2.806 12.1 4.732 13.3 6.522
200 30.1 11.772 42.1 16.465 10.129 4.985 15.9 6.218 - -
250 42.2 16.583 59.2 23.153 15.481 7.620 19.8 7.744 - -
300 53 20.728 78.3 30.623 21.962 10.810 23.6 9.230 - -

表-2 配管材料別・管径別炭酸ガス排出量指数

管径/管種 SGP STPG
sch40
VP SUS
(JIS G 3448)
銅管硬貨
Mタイプ
(JIS H 3300)
20 3.195 3.289 0.737 1 1.161
25 3.537 3.741 0.821 1 1.259
32 3.449 3.541 0.696 1 1.279
40 3.137 3.306 0.803 1 1.416
50 3.739 3.831 0.994 1 1.943
65 3.395 4.145 0.827 1 1.710
80 2.025 2.604 0.639 1 1.156
100 2.128 2.862 0.767 1 1.548
125 2.355 3.407 0.882 1 1.949
150 1.636 2.289 0.593 1 1.378
200 1.893 2.648 0.802 1 -
250 2.141 2.990 0.984 1 -
300 2.246 3.318 1.171 1 -

図-3 誰が地球環境に最もやさしいのか?

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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