工具の通販モノタロウ 建築設備配管工事の基礎講座 配管材料:ステンレス鋼鋼管(SUS)

建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第2章 建築設備用配管材料の種類

2-4 ステンレス鋼鋼管

ステンレス配管の原材料となる「ステンレス鋼(以降SUS鋼という)」は、「不とう鋼」とも呼ばれる。管表面に「不働態被膜(技術用語解説参照)」を形成するので、文字通り「錆び(Stain)の無い(less)鋼」、または「錆びにくい鋼」、いわゆる「耐食材料」とみなされているが、明確な定義はなく一般的に「12%以上のクロムを含む鉄合金」と考えてよい。

SUS鋼は、その成分から「Cr系」と「Cr-Ni系」とに分けられ、最初に実用化されたのは「12%~13%Cr鋼」(1912年、刃物として)、ついで約10年後に「18%Cr-8%Ni鋼」が市場に現れた。この「18%Cr-8%Ni鋼」は、「オーステナイト組織」を持ち、耐食性・加工性・溶接性にすぐれている。

【技術用語解説】不働態被膜(passive state)とは?

標準電位列で「卑な金属」が本来の活性を失って、「貴な金属」のような挙動を示す状態。「不働態化」は、金属表面にごく薄い「酸化被膜」の形成によってもたらされ、「ステンレス鋼」・「アルミニウム」・「チタン」などの「有用な耐食性」の根底となっている。(JIS Z 0103)

しかし、「耐食材料」とされてはいるが、銅管などと同様に「局部腐食」の障害が多く発見される材料でもある。ちなみに、SUSの「不働態被膜」を破壊する環境因子の代表的なものは、「塩素イオン」である。

SUSは、その用途により表ー1のように分類されている。

表-1:ステンレス銅(SUS)の分類

用途 規格番号 名称 適用範囲 製造方法 記号
構造用 JIS G 3446 機械構造用ステンレス鋼管 機械、自動車、自転車、家具、器具等の機械部品および構造物 シームレス管
溶接管
TKA
TKO
配管用 JIS G 3447 ステンレス鋼サニタリー管 酪農、食品工業 シームレス管
溶接管
TBS
JIS G 3448 一般配管用ステンレス鋼管 給水、給湯、排水、冷温水の配管 シームレス管
溶接管
TPD
JIS G 3459 配管用ステンレス鋼管 耐食用、低温用、高温用などの配管 シームレス管
溶接管
TP
JIS G 3468 配管用溶接、大径ステンレス鋼管 耐食用、低温用、高温用などの配管 シームレス管
溶接管
TPY
熱伝導用 JIS G 3463 ボイラ、熱交換器用ステンレス鋼管 ボイラの過熱器管、化学工業や石油工業の熱交換器管等 シームレス管
溶接管
TB
JIS G 3467 加熱炉用鋼管 石油精製工業、石油化学工業等の加熱炉用 シームレス管
溶接管
TF

ちなみに、従来建築設備用配管材料として、”高価で贅沢な鋼管”というイメージの強かったSUS鋼管は、近年建築設備配管材料の中でのシェアーを急速に伸ばしつつあるが、「耐食性」・「耐熱性」にすぐれ、また「軽量」であるためである。

従って、耐食性を要求する配管や高温用・低温用の配管材として使用される。

ところで、建築設備用配管材料として使用されるSUS鋼管には、薄肉の1.一般配管用ステンレス鋼管(JIS G 3448:SUS-TPD)と厚肉の2.配管用ステンレス鋼管(JIS G 3459:SUS-TP)との2種類がある。 SUS-TPDは、最高使用圧力:1MPa以下の給水・給湯・排水・冷温水の配管等に使用され、材質としては、SUS304とSUS316の2種類がある。屋内配管には一般的にSUS304が使用されているが、SUS316は、水質・環境などから、SUS304より「高い防食性」が要求される用途に使用される。

なお、空調・給排水設備では、材料費などの観点から、薄肉の「一般用ステンレス鋼管(SUS-TPD)」が使用される場合が多い。

一方、SUS-TPは耐食用・高温用および低温用に使用され、スケジュール番号:5S・10S・20S・40S・80S・120S・160Sがある。その他に、水道用には、1MPa(10kgf/cmn²)以下で使用される「水道用ステンレス鋼管(JWWA G 115-82・記号:SSP)のSUS304・SUS316の2種類があるが、ステンレス管の「線膨張係数(図―1参照)」は、銅管の「線膨張係数」とほぼ同じであるが、SGPの1.5倍もある。施工上はこの点に十分留意する必要がある。

【技術用語解説】線膨張係数(coefficient of lineal expantion)

温度が1℃上昇する場合に、長さ方向に膨張する割合のこと。

表-2:各種配管材料の熱膨張係数

配管材料 膨張係数(℃)
鋼管(SGP) 0.00001098
ステンレス鋼管(SUS) 0.000016
鋼管(Cu) 0.0000171
耐熱塩化ビニル管(HITV) 0.00007
ポリブテン管(PB) 0.00015
架橋ポリエチレン管(XPE) 0.0002

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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