工具の通販モノタロウ 砥石 切削工具の基礎講座 研削といしのバランス調整

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第5章 研削砥石

5-6 研削といしのバランス調整

研削といしはフランジと呼ばれる治具に取り付けた後、研削盤の主軸に装着します。研削といしをフランジに取り付けた後、必ず行なければならないのがバランスの調整です。研削といしとフランジの重心が一致しないまま研削といしを回転させると、振動が生じ大変危険です。微小な振動でも良好な加工はできません。自動車のタイヤを交換する際にも、タイヤとホイールの重心を合わせるため、バランスの調整を行っています。タイヤが回転した際、振動があると危険ですし、微小な振動でも乗り心地が悪くなってしまいます。

研削といしとフランジのバランス調整(重心合わせ)は図に示す「バランス駒」と呼ばれる小片の金属をフランジ上を移動させて行います。そして、バランス調整を行う際に使用する台には(1)天秤式バランス台、(2)平行棒式バランス台、(3)ローラ式バランス台の3つがあります。

バランス駒

バランス駒



平行棒式バランス台

平行棒式バランス台



ローラ式バランス台

ローラ式バランス台



天秤式バランス台は静的なバランス調整方法の中で最も感度がよく、精度の高いバランス調整ができ、多用されています。外径200mm程度の研削といしのバランス調整に適しています。

天秤式バランス台

天秤式バランス台



平行棒式バランス台は天秤式バランス台よりも幾分感度は劣りますが、剛性が高いので、円筒研削盤で使用される外径が大きな研削といしのバランス調整によく使用されます。据え付けの際には、台の水準器を確認して、水平精度を調整する必要があります。

ローラ式バランス台は静的なバランス調整方法の中で最も感度が劣るので、あまり使用されませんが、据え付けの際に台の水平精度をそれほど気にしなくてもよいというのが利点です。

なお、研削作業の一部は「労働安全衛生法」という法律に基づき守るべき規則が決められており、とくに研削といしの取り付け、取り外し作業など特別教育を修了した者しか行うことはできません。以下に、労働安全衛生規則に定められている代表的なものを示します。研削盤作業を行う際は下記に示す規則を必ず守ってください。わかりやすいように一部表現を変えています。

  1. 「研削といし」の取り替えまたは取り替え時の試運転は厚生労働省令で定める危険又は有害な業務に規定されており、これを実施する作業者は作業に関する特別教育を受講し者に限られる。(労働安全衛生規則36条)
  2. 「研削といし」の破裂事故が発生した場合には、その報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。(労働安全衛生規則96条)
  3. 「研削といし」が回転中はといし覆い(といしカバー)を閉めなければならない。(労働安全衛生規則117条)
  4. 「研削といし」はその日の作業を開始する前には1分間以上、研削といしを取り替えたときには3分間以上試運転をしなければならない。(労働安全衛生規則118条)
  5. 「研削といし」は、最高使用周速度を超えて使用してはならない。(労働安全衛生規則119条)
  6. 1号平形の「研削といし」は、側面を使用してはいけない。(労働安全衛生規則120条)
  7. 換気が不十分な場所で、乾式研削を行ってはいけない。(労働安全衛生規則286条)
執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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