工具の通販モノタロウ 切削工具の基礎講座 エンドミルの仕様とたわみの関係

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第4章 フライス加工用の切削工具

4-8 エンドミルの仕様とたわみの関係

エンドミルはミーリングチャックでエンドミルのシャンクを保持する片持ち支持であるため、突き出し長さL(保持部からの長さ)が長くなるほどたわみやすくなります。切削時にエンドミルがたわむと寸法精度や仕上げ面粗さが悪化することに加え、びびりが発生しやすくなるため、工具寿命が短くなります。したがって、エンドミルのたわみはできる限り抑制しなければいけません。

切削抵抗Fがエンドミルの刃先に一方向から作用すると仮定すると、エンドミルのたわみ量は式(1)で求めることができます。実際の切削では、エンドミルの刃先のみに切削抵抗が作用することはありませんが、このようなモデルを考えることにより、エンドミルの突き出し長さLと外径Dが異なる場合の切削抵抗とたわみ量の関係を把握することができます。

図 各種エンドミルの突き出し長さLとたわみ量δの関係

図 各種エンドミルの突き出し長さLとたわみ量δの関係



式

式:エンドミルのたわみ量



エンドミルのたわみ量δは式(1)からわかるように、突き出し長さLの3条に比例し、外径Dの4条に反比例することがわかります。たとえば、バイトの突き出し長さLを1/2に短くすればたわみ量δは1/8になります。また、外径Dを2倍にすれば、たわみ量δは1/16に激減します。つまり、エンドミルを選択する際には、実作業で不都合がない範囲で長さ(突き出し長さ)Lを短くし、外径Dを太くすることが大切といえます。エンドミルは、「短く(突き出し長さを短く)、太く(外径を大きく)」が原則です。

また、式(1)からわかるように、エンドミルのたわみ量δはヤング率(縦弾性係数)にも反比例します。ヤング率(縦弾性係数)は材料固有の値で、変形のし難さを示す指標です。つまり、ヤング率(縦弾性係数)の値が大きい材質ほど変形し難く、値が小さい材質ほど変形しやすいと言えます。すなわち、ヤング率(縦弾性係数)の大きい材質のエンドミルを用いることにより、エンドミルのたわみ量δを抑制することができます。

高速度工具鋼(ハイス)のヤング率はおおむね210Gpaに対し、超硬合金のヤング率は約620Gpaで、高速度工具鋼の約3倍です。つまり、エンドミルの材質を高速度工具鋼から超硬合金に代えることで、エンドミルのたわみ量δは1/3になります。このことから、小径のエンドミルや突き出し長さLが長くなるような場合には、エンドミルのたわみを抑制する対策として、超硬合金製のエンドミルを使用することが有効といえます。

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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