切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第6章 手仕上げ工具

6-4 リーマ

ドリルであけた穴は一見真円のように見えますが、厳密に測定すると形状は歪み、穴の内径寸法はドリルの外径より大きくなっています。また、穴はまっすぐではなく、微妙に曲がっており、穴の内面はドリルが擦った跡が残存し、きれいではありません。

リーマ加工の加工工程

リーマ加工の加工工程



穴の真円度や内径寸法、真直度、穴の内面の表面粗さなど穴に高い精度が必要なときに使用する切削工具が「リーマ」です。リーマは先端からシャンク方向(軸方向)に掛けて①切れ刃(食付き部)、②マージン、③バックテーパという構造をしており、これら3箇所が加工精度を左右する主要な働きをします。

  • 切れ刃は穴の内面を削り、所望の内径寸法に加工する働きをします。
  • マージンは穴の内面を擦り潰して表面粗さを向上させます。擦り潰して表面粗さを向上させることを「バニシ作用」といいます。バニシ作用をデリケートで、加工時の回転数や送り速度、加工代、クーラントの種類や供給方法など加工条件や加工環境によって良否が変わります。加工時の回転数が高いほどマージンの幅を小さくしないと、摩擦によりびびりなど加工精度が悪くなります。またマージンの幅が大きいほどガイド性が高く、真直性が良くなる一方、小さいほどガイド性が低く、真直性が悪くなります。
  • バックテーパは送り方向に対して逃げを与えるために設けられた角度で、リーマの剛性に影響し、大きいほど剛性が低く、真直性が悪くなる一方、小さいほど剛性が高く、真直性が良くなります。つまり、真直性に関してはマージン幅とバックマージンのバランスが重要ということになります。
リーマ加工の原理

リーマ加工の原理



良好なリーマ加工を行うためには加工代の設定が大切で、加工代は工作物の材質と下穴(ドリル穴)の表面粗さによって変わります。リーマの加工代は直径で約0。1~0。5mmが目安で、穴が大きいほど加工代も大きく設定します。

また、リーマ加工はリーマの取り付け精度(心ずれ、回転振れ)、適正な切削油の供給、確実な切りくずの排出がポイントになります。心ずれ、回転振れは0。5μm以内が目安です。リーマの外径は0。1mm単位で市販されていますので、仕上げ寸法に一致するリーマを使用します。

リーマで加工できる穴の内径はφ20mm程度で、これ以上大きな穴の場合には、「中ぐり(ボーリング)」といわれる加工を行います。中ぐりは旋盤で使用するバイト(チップ)を使用して穴を広げる加工法です。

リーマ加工と中ぐり(ボーリング)

リーマ加工と中ぐり(ボーリング)



執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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