切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第5章 研削砥石

5-3 研削といしの5因子

5-2で解説したように、「研削といし」は「と粒」、「結合剤」、「気孔」で構成されており、これらを「研削といし」の3要素といいます。 そして、「と粒の種類」、「粒度(砥粒の大きさ)」、「結合度(と粒とと粒の結合の強さ)」、「組織(と粒率)」、「結合剤の種類」は研削といしの性能を左右するもので、この5つを「研削といしの5因子」といいます。 つまり、「研削といし」の構造と性能を示す情報をまとめて、これらは「研削といしの3要素5因子」といわれます。以下に、5因子について簡単に解説します。

「と粒の種類」は「アルミナ」と「炭化けい素」の2種類に大別され、アルミナは鉄鋼材料(磁石に付く材料)に、炭化けい素はアルミニウム合金や銅合金など非鉄金属(磁石に付かない材料)や鋳鉄など硬くて脆い材質、超硬合金などに使用します。

「粒度」は「と粒の大きさ」を表す指標で、粒度の数値が大きいほど、と粒は小さくなり、粒度の数値が小さいど、と粒は大きくなります。荒加工など削り量を多くしたいときは粒度の小さいものを選択し、仕上げ加工など綺麗な表面を得たいときには粒度の大きなものを選択するとよいでしょう。

「結合度」は「と粒とと粒の結合力の強さ」を表す指標です。結合度はA~Zで分類され、AからZに向かうほど、結合度は高くなります。一般的な研削盤作業では、「H、J、K、L」を使用するのがよいでしょう。

「組織(と粒率)」は「砥粒の含有割合」を表す指標で、研削といしに含有する「と粒の数」が多いほど組織が高く、「と粒の数」が少ないほど組織が低くなります。組織が高くなると、と粒の数が多くなるため気孔の割合が減り、切りくずの排出が悪くなります。 したがって、通常は砥粒率が50%程度のものを使用するのがよいでしょう。

「結合剤の種類」はJIS R 6242で8種類規定されています。ただし、一般には鉱石を主成分とする「ビトリファイド結合剤」か、樹脂を主成分とする「レジノイド結合剤」を選択するのがよいでしょう。 また、ビトリファイド結合剤はレジノイド結合剤よりも仕上げ面が粗くなりやすいため、仕上げ加工などの鏡面加工を目的とするときにはレジノイド結合剤を使用します。

研削といしを使用する際には「3要素5因子」をしっかりと理解して、使い分けることが大切です。5因子については別途詳細解説しますので参照してください。

研削といしの3要素5因子

研削といしの3要素5因子

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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