工具の通販モノタロウ チップ 切削工具の基礎講座 チップブレーカの種類(溝形と突起形)

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第3章 旋盤用の切削工具

3-7 チップブレーカの種類(溝形と突起形)

チップブレーカはすくい面に溝を付けただけの「溝形」とすくい面に複雑な凹凸の模様を付けた「突起形」の2種類に大別されます。チップブレーカの形状には正式な名称はないため、ここでは便宜上、「溝形、突起形」と呼ぶことにします。 突起形のチップブレーカは金型を使ったプレス加工でつくられるため、「モールデット(Molded)形」と呼ぶこともあります。金型は英語で「Mold(モールド)」といいます。

溝形も突起形も切りくずを分断する働きは同じですが、多少性能が異なります。下図に、溝形と突起形、それぞれのブレーカが切りくずを分断できる加工条件の範囲(イメージ図)を示します。図の横軸はバイトの送り量で、縦軸は切込み深さです。 図から、溝形は切りくずを分断できる加工条件の範囲が狭く、一方、突起形は切りくずを分断できる加工条件の範囲が広いことがわかります。 これは、溝形はすくい面に溝を付けただけの単純な形状である一方で、突起形はコンピュータを使ったシミュレーションに基づく緻密な設計による形状であるためです。つまり、切りくずを分断できる加工条件が広いという観点では、突起形は溝形よりも優れているといえます。 突起形の模様は適当に付けられたものではなく、切削工具メーカの技術の結晶です。

さらに図を見ると、バイトの送り量と切込み深さの両方が小さいときには、溝形も突起形も切りくずが分断できる条件の範囲から外れていることがわかります。すなわち、バイトの送り量と切込み深さの両方が小さいときはチップブレーカが機能せず、切りくずが分断されないということです。

バイトの送り量と切込み深さは切りくずの大きさに相当し、バイトの送り量と切込み深さを大きくすると、切りくずも大きくなります。 つまり、チップブレーカを正常に機能させ、切りくずを適正に分断するためには一定以上の切りくずの大きさが必要で、切りくずが極端に小さい場合にはチップブレーカのあるチップでもチップブレーカが機能せず、切りくずは分断されずに長く繋がってしまいます。 仕上げ加工ではバイトの送り量と切込み深さを小さくしますが、仕上げ加工の際、切りくずが分断されず、繋がりやすくなるのはチップブレーカが機能しないためです。

仕上げ加工で切りくずを分断するためには、切りくずが分断されるバイトの送り量と切込み深さをあらかじめ確認しておくことが大切です。

スローウェイチップ

スローアウェイチップ

切りくずが分断される切削条件の範囲

切りくずが分断される切削条件の範囲

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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