測定工具の基礎講座
測定工具にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
本連載では、各測定工具の使い方や寸法の読み取り方に関して、実際の写真や図を通してご紹介していきます。
5-3 ブロックゲージのメンテナンス
セラミックス製のブロックゲージは錆びる心配がないため取り扱いがとても簡単になりましたが、油断は禁物。ブロックゲージは長さの基準として最も頼りになる存在です。
鋼鉄製のブロックゲージを購入すると写真1のように分厚いグリスに包まれています。いつでも使えるようにするには、この分厚く塗られたグリスを取り除くことが必要です。グリスを分厚く塗るのは長期保存の時に錆が来ないようにするためです。長期間グリス漬けにするとグリスが酸化して固着し、誤差の原因となるので、使う前にグリスを取り除きます。セラミックス製ブロックゲージは錆びないのでグリスや油は不要です。

写真1
ブロックゲージの基準面は平面であることを確認する必要があります。特に薄いピースは無理な力が掛かると曲がる可能性があります。
定盤の上にブロックゲージの検査したいピースを置き、温度を馴染ませたら、写真2のようにオプティカルフラットを載せてニュートンリングを見ます。この写真はニュートンリングがいくつかの虹の縞模様になって見えており、縞模様が均等でまっすぐになっていればOKです。ニュートンリングの間隔が詰まって多数の縞模様になっているときは残念ながらそのピースが曲がっているので、廃棄することになります。リンギングがうまくいかない場合はこの試験を実施して、ピースが曲がっていないかを確認します。オプティカルフラットを載せるだけですから簡単ですね。

写真2
使い終わったらブロックゲージに付いた手の汗や汚れを拭き取り、セラミックス製ブロックゲージはそのままケースに。鋼鉄製のブロックゲージは防錆油あるいはグリスを薄く塗ってケースに収めます。
メンテナンスキットの中にラッピング砥石が入っているので、傷ついた表面をラッピング砥石で軽く研ぎます。オプティカルフラットを使って表面の凸が亡くなるまでラッピングしてください。写真3のように、ラッピング砥石の上にピースを載せ、指で軽く押さえながら8の字を描くように滑らせます。この時力を入れすぎると平面度を損なうので軽く擦る感じです。写真では基準面の一部が錆びてしまったブロックゲージをラッピングストーンを使ってラッピングしています。消しゴムを使うと指の熱がブロックゲージに伝わらず且つブロックゲージをうまく押さえることができます。写真ではわかりづらいですが、このようにして八の字に滑らせることでラッピングができます。

写真3
ラッピングによって修復できたかどうかを見るにはニュートンリングで判断します。ラッピング直後は温度上昇による変形があるので、温度が馴染むまで10分程待ってからオプティカルフラットを載せます。うまくできていればニュートンリングの虹は2~3本程度で収まっているはずです。この作業は鋼鉄製もセラミックス製も同じです。
ブロックゲージの各ピースにグリスを薄く塗り、防錆紙で包み、ケースに収納します。グリスを塗るときはブロックゲージを直接手や指で触らないように注意します。
『測定工具の基礎講座』の目次
第1章 ノギス
-
1-1ノギスの使い方と寸法の読み取り方ノギスは手のひらサイズの「物の長さ」や「太さ」を手軽に精度よく測ることができる便利な工具です。
-
1-2ノギスの4つの測定方法ノギスにはいろいろな種類がありますが最も一般的なものはM型ノギスです。M型ノギスはものを挟むジョーの外にも便利な測定部分があります。
-
1-3デジタルノギスとダイヤルノギス第1章で述べたように、0.01mmまで読み取れるデジタルノギスも、メーカー保証は±0.2mmです。
第2章 マイクロメータ
-
2-1マイクロメータの使い方マイクロメータは手軽に0.01mm(百分の1ミリメートル)の精度で長さを測ることができる便利な道具です。
-
2-2マイクロメータのゼロ合わせ外測マイクロメータは、目盛のあるマイクロメータヘッドと測定物を一直線上に挟んでいるため、アッベの原理の見本のようになっています。
-
2-3デジタル式マイクロメータの上手な使い方デジタル式マイクロメータもマイクロメータヘッドを使った一般のマイクロメータと同様25mm毎になっています。
第3章 ダイヤルゲージ
-
3-1ダイヤルゲージの特徴と種類寸法を直接測れるノギスやマイクロメータに対し、曲がりや偏心などを細かく読み取ることができる測定器があると便利です。
-
3-2ダイヤルゲージを上手に使うためにズバリ寸法が測れるノギスやマイクロメータがあれば工作はこれで十分と思うかもしれません。しかし、町工場やちょっとした工作では、寸法が正しく測れるだけでは困ることがたくさんあります。
-
3-3その他の測定工具前節までに、ノギス、マイクロメータ、ダイヤルゲージ、の特徴と使い方を解説してきました。しかし、世の中にはこのほかにも多くの測定工具があります。この章ではそうした測定工具を紹介します。
第4章 定盤
-
4-1定盤とは寸法を直接測れるノギスやマイクロメータに対し、曲がりや偏心などを細かく読み取ることができる測定器があると便利です。
-
4-2定盤の材質による違いここからは定盤についてもう少し踏み込んだ解説です。定盤は、設備投資としてはそれほど大きな存在ではありませんが、ものつくりの基礎技術・技能の最も大切な「基準面」であることから、その手入れには神経を使います。
-
4-3定盤のメンテナンス鋳鉄製定盤は基準平面を錆びさせないように時々油を塗ります。写真1のようにスプレー式の潤滑油でもOKです。特に梅雨は要注意、台風が来た後もよく錆びるので台風が来る前に多めの油を塗っておきます。
第5章 ブロックゲージ
-
5-1ブロックゲージとはブロックゲージとは、写真1にあるように、縦横が同じで厚さの異なる小さなブロックを順に100個程度セットにしたものです。
-
5-2リンギング(密着)を覚えようブロックゲージの小片どうしを密着させて一本の棒のように扱う手法を「リンギング」と言います。
-
5-3ブロックゲージのメンテナンスセラミックス製のブロックゲージは錆びる心配がないため取り扱いがとても簡単になりましたが、油断は禁物。
-
5-4ブロックゲージアクセサリを併用した高さ基準として使うブロックゲージを購入するとき、予算が許せばぜひともブロックゲージアクセサリを購入されることをお勧めします。
第6章 水準器
-
6-1水準器の特徴と使い方写真1は色々な水準器です。左から、機械据え付け用の精密水準器、建築現場用水準器、カメラ用水準器です。
-
6-2精密水準器の校正精密水準器はちょっとした振動や温度変化によって気泡管を支える部分がわずかにずれることから、どうしても誤差が出ます。従って、使う直前に水平を正しく表示するように調整する必要があります。これを「校正」と言います。
-
6-3さまざまな水準器写真1のように、一方にマイクロメータが付いているものを傾斜水準器といいます。傾斜水準器は便利ですが支持端のヒンジやマイクロメータの取り付け部分、マイクロメータで押している部分などの可動部(写真2)があるため普通の水準器に比べて誤差が生じやすいので、丁寧に取り扱う必要があります。
第7章 基準器
-
7-1直角の基準<イケール、マス、Vブロック、スコヤ>定盤は水平面の基準であることを第4章で紹介しましたので、ここではその他の基準器を紹介します。
-
7-2直線の基準<ストレートエッジ>直線の基準は、その測定方法によって基準の形状も違ってきます。
-
7-3直角の基準<ハイトゲージ>定盤の上で行う作業で最も利用頻度が高いのは高さ基準となるハイトゲージです。ハイトゲージの高さを表示する機構はノギスと同じです。写真1のように、高さ寸法の表示方法で、バーニア式、ダイヤル式、デジタル式がありますが、基本的な形状は同じです。