測定工具の基礎講座
測定工具にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
本連載では、各測定工具の使い方や寸法の読み取り方に関して、実際の写真や図を通してご紹介していきます。
6-3 さまざまな水準器
写真1のように、一方にマイクロメータが付いているものを傾斜水準器といいます。傾斜水準器は便利ですが支持端のヒンジやマイクロメータの取り付け部分、マイクロメータで押している部分などの可動部(写真2)があるため普通の水準器に比べて誤差が生じやすいので、丁寧に取り扱う必要があります。

写真1 傾斜水準器

写真2 傾斜水準器のマイクロメータ

写真3 傾斜水準器の感度
傾斜水準器で未知の傾斜角度を測るときは、傾斜角度が一番大きくなる置き位置を選びます。僅かな傾斜の場合は最大傾斜を見つけるのも一苦労です。
傾斜水準器で傾斜角度を測定するときは、最初に水平の基準面に置いて、マイクロメータの値がゼロの時に水準器の気泡が中央に来るようにします。精密水準器の校正と同じです。次に、測定したい面に傾斜水準器を置き、マイクロメータがある方を傾斜の下側にして、マイクロメータのシンブルを回し、気泡が中心に来たときのマイクロメータを読み取ります。写真の傾斜水準器はスパンが200mmなので、1mのスパンで何ミリメートル傾いているかという傾斜の定義から、マイクロメータの読みを5倍した値となります。
サインバーはブロックゲージを併用することで正確な角度基準を作ることができます。写真4-1は芯間50mmの小型のもの、写真4-2は芯間100mmの治具用サインバーです。芯間の長いサインバーは上に水準器を載せられるので、未知の傾斜を測定することもできます。

写真4-1 サインバーとブロックゲージ(芯間50mm)

写真4-2 サインバーとブロックゲージ(芯間100mm)
例えば芯間(円柱の間隔)が50mmのサインバーであれば、5mmのブロックゲージを挟むと、1000mm÷50mm=20倍となり、傾斜は5mmの20倍。従って、100mm/1000mm(千分の100ミリメータ)となります。
同じ要領で、サインバーの上に水準器を載せ、水準器が水平を示すブロックゲージを探すことで未知の傾斜を正確に測ることができるため、高級な測定装置がないときに便利です。
写真5-1はユニバーサルプロトラクタです。分度器にバーを付けて、更にバーニアスケールで分単位まで読み取れるようにした高級な物から、分度器にバーを付けただけの簡単なものまでいろいろあります。

写真5-1 ユニバーサルプロトラクター

写真5-2 プロトラクター

写真5-3 デジタルプロトラクター

写真5-4 ユニバーサルべベルプロトラクター
使い方は至って簡単。直観的にわかりますよね。知りたいところにバーと分度器の基準面を当てて、角度を読み取るだけです。
バーニアスケールの付いた高級なプロトラクタはバーニアを読み取りやすく拡大鏡が付いています。測定したい面に当ててバーの動きを固定ネジで止め、角度を読み取るだけです。
アングルゲージは0°~45°までの角度を表示した小板を数十枚束ねたもので、ゲージを押しあてて目で見て判断します。写真6のようにポケットにも入る大きさなので精密な角度を測ることはできませんが、気楽に使えます。

写真6 アングルゲージ
角度を測るというタイトルからは離れますが、フライス加工である程度正確な角度を必要とする時があります。正確さを求める場合はサインバーを用いますが、写真7のようなアングルブロックなら、正直板(パラレル)のようにミーリングバイスに置いてその上に加工物を載せ、バイスを締め付けるだけで良いので便利です。写真8はアングルブロックを組み合わせて16°の傾斜を作っています。この上に16°の傾斜面がある部品を載せて上面をダイヤルゲージで探れば、傾斜角の検査が成立します。

写真7 アングルブロック

写真8 アングルブロックを組み合わせて傾斜を作る
最近建築現場で重宝されるのはレーザーレベル(写真9)です。とにかく取り扱いが簡単。製品によっても多少違いますが、多くは現場の適当な場所に置いてスイッチを入れるだけです。
現場の見通しの良いところにレーザーレベルを置いてスイッチを入れるとレーザーの赤い光が水平と垂直のラインとなって壁や柱を照らします。しかし、レーザーの赤い光は目に入ると失明など大きな労働災害になるので、鏡や窓ガラスなどの反射で思わぬところにレーザーの光が行かないよう細心の注意が必要です。作業者は必ずレーザー光防止用の安全メガネ(写真10)の写真を着用してください。そして、必要のない時はスイッチを切って、余分な照射は止めましょう。

写真9 レーザーレベル

写真10 レーザーライン用グラス
『測定工具の基礎講座』の目次
第1章 ノギス
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1-1ノギスの使い方と寸法の読み取り方ノギスは手のひらサイズの「物の長さ」や「太さ」を手軽に精度よく測ることができる便利な工具です。
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1-2ノギスの4つの測定方法ノギスにはいろいろな種類がありますが最も一般的なものはM型ノギスです。M型ノギスはものを挟むジョーの外にも便利な測定部分があります。
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1-3デジタルノギスとダイヤルノギス第1章で述べたように、0.01mmまで読み取れるデジタルノギスも、メーカー保証は±0.2mmです。
第2章 マイクロメータ
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2-1マイクロメータの使い方マイクロメータは手軽に0.01mm(百分の1ミリメートル)の精度で長さを測ることができる便利な道具です。
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2-2マイクロメータのゼロ合わせ外測マイクロメータは、目盛のあるマイクロメータヘッドと測定物を一直線上に挟んでいるため、アッベの原理の見本のようになっています。
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2-3デジタル式マイクロメータの上手な使い方デジタル式マイクロメータもマイクロメータヘッドを使った一般のマイクロメータと同様25mm毎になっています。
第3章 ダイヤルゲージ
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3-1ダイヤルゲージの特徴と種類寸法を直接測れるノギスやマイクロメータに対し、曲がりや偏心などを細かく読み取ることができる測定器があると便利です。
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3-2ダイヤルゲージを上手に使うためにズバリ寸法が測れるノギスやマイクロメータがあれば工作はこれで十分と思うかもしれません。しかし、町工場やちょっとした工作では、寸法が正しく測れるだけでは困ることがたくさんあります。
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3-3その他の測定工具前節までに、ノギス、マイクロメータ、ダイヤルゲージ、の特徴と使い方を解説してきました。しかし、世の中にはこのほかにも多くの測定工具があります。この章ではそうした測定工具を紹介します。
第4章 定盤
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4-1定盤とは寸法を直接測れるノギスやマイクロメータに対し、曲がりや偏心などを細かく読み取ることができる測定器があると便利です。
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4-2定盤の材質による違いここからは定盤についてもう少し踏み込んだ解説です。定盤は、設備投資としてはそれほど大きな存在ではありませんが、ものつくりの基礎技術・技能の最も大切な「基準面」であることから、その手入れには神経を使います。
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4-3定盤のメンテナンス鋳鉄製定盤は基準平面を錆びさせないように時々油を塗ります。写真1のようにスプレー式の潤滑油でもOKです。特に梅雨は要注意、台風が来た後もよく錆びるので台風が来る前に多めの油を塗っておきます。
第5章 ブロックゲージ
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5-1ブロックゲージとはブロックゲージとは、写真1にあるように、縦横が同じで厚さの異なる小さなブロックを順に100個程度セットにしたものです。
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5-2リンギング(密着)を覚えようブロックゲージの小片どうしを密着させて一本の棒のように扱う手法を「リンギング」と言います。
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5-3ブロックゲージのメンテナンスセラミックス製のブロックゲージは錆びる心配がないため取り扱いがとても簡単になりましたが、油断は禁物。
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5-4ブロックゲージアクセサリを併用した高さ基準として使うブロックゲージを購入するとき、予算が許せばぜひともブロックゲージアクセサリを購入されることをお勧めします。
第6章 水準器
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6-1水準器の特徴と使い方写真1は色々な水準器です。左から、機械据え付け用の精密水準器、建築現場用水準器、カメラ用水準器です。
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6-2精密水準器の校正精密水準器はちょっとした振動や温度変化によって気泡管を支える部分がわずかにずれることから、どうしても誤差が出ます。従って、使う直前に水平を正しく表示するように調整する必要があります。これを「校正」と言います。
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6-3さまざまな水準器写真1のように、一方にマイクロメータが付いているものを傾斜水準器といいます。傾斜水準器は便利ですが支持端のヒンジやマイクロメータの取り付け部分、マイクロメータで押している部分などの可動部(写真2)があるため普通の水準器に比べて誤差が生じやすいので、丁寧に取り扱う必要があります。
第7章 基準器
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7-1直角の基準<イケール、マス、Vブロック、スコヤ>定盤は水平面の基準であることを第4章で紹介しましたので、ここではその他の基準器を紹介します。
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7-2直線の基準<ストレートエッジ>直線の基準は、その測定方法によって基準の形状も違ってきます。
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7-3直角の基準<ハイトゲージ>定盤の上で行う作業で最も利用頻度が高いのは高さ基準となるハイトゲージです。ハイトゲージの高さを表示する機構はノギスと同じです。写真1のように、高さ寸法の表示方法で、バーニア式、ダイヤル式、デジタル式がありますが、基本的な形状は同じです。