工具の通販モノタロウ チップ 切削工具の基礎講座 チップブレーカとチップポケット

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第3章 旋盤用の切削工具

3-6 チップブレーカとチップポケット

切りくずを分断するためにチップのすくい面に付けられた溝や突起のことを「チップブレーカ」といいます。チップブレーカを英訳すると、「Chip Breaker」になり、Chip(チップ)は「切りくず」、Breaker(ブレーカ)は「分断する」という意味になります。 つまり、チップブレーカは切りくずを細かく分断する働きをします。旋盤加工を行った際、切りくずが湾曲し、細かく分断されるときはチップブレーカが正常に機能している証拠です。 もし、チップのすくい面に溝や突起がなく平坦であれば(チップブレーカのないチップを使用したときには)切りくずは細かく分断されず、長い線状になります。

工作物を削る際に発生する切りくずはチップのすくい面上を滑りながら排出されます。したがって、チップブレーカがないチップでは切りくずが分断されず糸のように長くなります。切りくずはかみそりの刃のように鋭く、皮膚なら簡単に切り裂きます。 また、排出した直後の切りくずは非常に高温で、皮膚が触れると火傷します。切りくずは長く伸びると非常に危険です。 さらに、切りくずは長くなると、回転する工作物に絡まったり、加工した仕上げ面に傷が付いたり、絡まった切りくずをペンチなどで取り除く必要があるなど、加工品質や作業性も悪くなります。したがって、金属加工ではチップブレーカを上手に利用し、切りくずを適当な長さに分断しながら作業を行うことが大切です。 切りくずを細かく分断することで、掃除も簡単になります。

ただし、チップブレーカが付いたチップを使用すれば、どのような加工条件で削っても切りくずが短く分断されるというものではありません。 チップブレーカを使って上手に切りくずを分断させるためには、チップブレーカの形状に合わせた加工条件で削る必要があり、とくにバイトの送り量と切込み深さを調整することによって、切りくずを分断することができます。 DIYなど卓上旋盤などで作業するときには、工作物の回転数は切りくずの分断にはあまり影響しません。

なお、チップブレーカと同じ働きをするものに「ブレーカピース」というものがあります。ブレーカピースはチップのすくい面を上から押さえるタイプのホルダを使うときに使用し、チップのすくい面に載せて使用します。 すくい面から付き出したブレーカピースが切りくずを湾曲させ、分断します。ブレーカピースの大きさはいくつかあるので、チップブレーカと同じように、加工条件に合わせたものを選ぶことが大切です。

チップブレーカの付いたスローアウェイチップ

チップブレーカの付いたスローアウェイチップ

チップブレーカの付いていないスローアウェイチップ

チップブレーカの付いていないスローアウェイチップ

旋盤加工の様子

旋盤加工の様子

ブレーカピース

ブレーカピース

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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