工具の通販モノタロウ エンドミル 切削工具の基礎講座 コーナの強度を高めたエンドミル

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第4章 フライス加工用の切削工具

4-7 コーナの強度を高めたエンドミル

通常のスクエアエンドミルは外周刃と底刃が交わる部分(コーナ)が鋭く尖っています。エンドミルは高速で回転しながら工作物に衝突しますが、工作物に衝突する瞬間に大きな衝撃力を受けます。エンドミルはコーナが最初に工作物に接触する(コーナから工作物に食い込む)ため、コーナが鋭く尖っていることにより切れ味がよくなり、エンドミルが工作物に食い込みやすくなりますが、鋭いほど強度が低いため、衝撃力により欠けることがあります。コーナが欠けるとエンドミルが工作物へ進入しにくくなるため、エンドミルは本来の切削性能を発揮することはできません。欠けは突発的に発生するトラブルで切削加工に自動化を阻害する要因の一つです。

そこで、コーナの強度を高めたエンドミルが市販されています。このエンドミルはコーナを少しだけ平坦に成形し、コーナの強度を高めたものです。コーナを平坦にすることにより、コーナが工作物に進入しにくくなりますが、強度が高くなるため欠けを防止することができます。

エンドミルのコーナ

コーナが鋭い通常のスクウェアエンドミルでは、コーナの強度が低いため、切削中にコーナが欠けると、外周刃や底刃が寿命に達していないにも関わらず、工具交換を行わなければなりません。しかし、あらかじめコーナを平坦に成形し、コーナの強度を高めることで、コーナの欠けを防止し、外周刃や底刃が寿命に至るまで使用することができるようになります。一般的な切削条件では、コーナの強度を高めたエンドミルは本来持っている切削性能を発揮して使用することができるため、コーナが鋭いエンドミルよりも工具寿命が長くなります。

図 一般的なコーナ形状のエンドミルと「コーナの強度を向上させたエンドミル」の工具寿命の違い

図 一般的なコーナ形状のエンドミルと「コーナの強度を向上させたエンドミル」の工具寿命の違い

コーナの強度を高めたエンドミルはとくに大きな衝撃力が作用する高硬度な材料の加工に適しています。ただし、コーナが平坦であるため切れ味は幾分劣り、仕上げ面性状はコーナが鋭いエンドミルに比べて若干悪くなります。

このように、刃先の鋭さと欠けは相反する関係で、切れ味を優先させるのか、刃先の強度を優先させるのか、どちらを優先させるかによって、使用するエンドミルを選択することになります。

コーナの強度を向上させたエンドミルは「アタリ付き」、「ギャッシュ当て」、「ギャッシュランド付き」などの商品名(呼び名)で各製造メーカから販売されています。覚えておくとよいでしょう。

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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