工具の通販モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 NCプログラム(インクレメンタルとアブソリュート)

マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

3-1 NCプログラム(インクレメンタルとアブソリュート)

マシニングセンタを動かすためのプログラムをNCプログラムといいます。NCは「Numerical Control」 の略称で、「数値制御」という意味です。つまり、NCプログラムは主軸(切削工具)やテーブルの位置を座標(数値)で指示する制御方法です。

NCプログラムには(1)インクレメンタル指令と(2)アブソリュート指令の2つの方法があります。

 

(1)インクレメンタル指令は現在位置の座標値から移動先の座標値までの移動量を指令する方法で、移動量をプラス値で指令すればプラス方向へ、マイナス値で指令すればマイナス方向へ動きます。このため、インクレメンタル指令は「増分値指令」ともいわれます。

インクレメンタル指令

 

(2)アブソリュート指令はワーク座標(プログラム原点)をゼロ点として移動先の座標値を指令する方法です。このためアブソリュート指令は「絶対値指令」とも言われます。

アブソリュート指令

 

地図を示して、目的地までの道程を教えるのがインクレメンタル指令、目的地の経度と緯度(位置)を教えるのがアブソリュート指令です。

たとえば、主軸が「X軸100、Y軸100」の座標に位置するとして、インクレメンタル指令でX200、Y200と入力すると、指令された数値は増分値を示すため主軸はX軸300、Y軸300の座標に移動します。一方、アブソリュート指令でX200、Y200と入力すると、指令された数値は絶対値を示すため主軸はX軸200、Y軸200の座標に移動します。

アブソリュート指令はワーク座標(プログラム原点)をゼロ点にした絶対座標を指令するので切削工具の位置が把握しやすいこと、座標値の指令ミスがあった場合、その座標値のみ修正すればよいことなどが利点です。また、設計変更にともない切削工具の移動経路(ツールパス)を修正する場合、アブソリュート指令はインクレメンタル指令よりも容易です。インクレメンタル指令では運動経路の修正を行う場合、修正した座標以降の指令値も変更する必要があります。

主となるプログラムはアブソリュート指令で行い、必要に応じてインクレメンタル指令を使用するのが一般的な考え方です。ただし、アブソリュート指令はインクレメンタル指令に比べてNCプログラムが長くなることが欠点です。

インクレメンタル指令「G91」、アブソリュート指令は「G90」です。

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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