マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第4章 マシニングセンタの要素技術

4-2 主軸の軸受

マシニングセンタの主軸の性能は主軸を支える軸受が大きく影響します。軸受に求められる基本性能は「軸に作用する荷重を支持し、静かに滑らかに精度よく回転すること」で、評価項目は剛性、負荷荷重(許容荷重)、負荷を受けられる方向、回転精度、減衰性、最高回転数、寿命、発熱性、メンテナンス性、価格などがあります。

軸受には(1)転がり軸受、(2)すべり軸受、(3)磁気軸受の3種類があります。

軸受の分類

軸受の分類

 

(1)ころがり軸受は多様な種類がありますが、マシニングセンタの主軸に使用されているのは主としてアンギュラ玉軸受、ころ軸受、円すいころ軸受です。とくにアンギュラ玉軸受は軸方向(アキシャル方向)と軸方向に垂直方向(ラジアル方向)の2つの方向の負荷を支持することができ、高速回転に適しているため多用されています。工作機械の主軸用に使用されるアンギュラ玉軸受はとくに高精度に製作され、組み付け時に回転誤差を最小にするための適正な予圧(プリロード)をかけられるようになっています。最近では軽量化、高剛性、耐摩耗性、耐焼付け性、耐熱性を向上させるため転動体(ボール)の材質にセラミックスを使ったものも採用されています。

(2)すべり軸受は潤滑流体の種類によって1.油と2.空気に大別でき、軸受のすきまに潤滑流体膜を形成させるメカニズムの違いによって1.動圧と2.静圧に分けられます。

油静圧軸受は運動精度、回転精度、減衰性に優れているため主として研削盤の主軸に多用されていますが、工作機械の機能の複合化によりマシニングセンタに使用されるケースも増えています。

空気静圧軸受は圧縮空気の圧力によって軸を支える構造です。空気の粘性は油の約1/1000程度であるため油静圧軸受に比べて剛性、負荷容量、減衰性が劣りますが、回転精度が高く、発熱も低いので小径工具の超高速回転用主軸の軸受として使用されています。エアースピンドル・空気軸受の工作機械用主軸では200,000min-1できるものも市販されています。

転がり軸受
すべり軸受

ころがり軸受とすべり軸受

 

空気軸受

空気軸受

 

(3)磁気軸受は磁石の反発力によって主軸を非接触で支持する軸受で、摩擦抵抗が小さく高速回転に適していますが、負荷容量が小さいこと、価格が高いこと、電磁コイルの発熱などの課題があり、広く普及していません。

空気静圧軸受や磁気軸受は油による汚れが生じないため環境に優しいこと、食品機械など潤滑油が使えない環境に使用できることが利点です。

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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