工具の通販モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 NCフライス盤とマシニングセンタの違い

マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第1章 マシニングセンタの基礎知識

1-2 NCフライス盤とマシニングセンタの違い

NCとは?

ボール盤や旋盤、フライス盤、研削盤などは人の手でハンドルを回し、操作する工作機械です。人の手でハンドルを回すと、操作する人のやる気(気分、熱意)や技量(スキル)によってつくられる部品の精度や品質が変わります。そこで、均一な部品を安定してつくるために、ボール盤や旋盤、フライス盤、研削盤のハンドルにモータを取り付け、モータの回転によってハンドルを回すようにしたのが「NC工作機械」です。

「NC」は「Numerical control」 の頭文字を取った略称で、Numerical controlは日本語で「数値制御」という意味です。そして、工作機械のハンドルをモータで回す際、開発されたのが加工する形状の輪郭を多数の点群と見なし、その点を座標(数値)に置き換え、刃物やテーブルが座標に向かって動くという制御方法です。つまり、「NC工作機械」は「点座標(数値)で制御する工作機械」という意味になります。

NC(数値を電気信号によって制御する方法)が開発され、人が加工作業に介入することがなくなり、加工される部品は作業者に依存せず、加工時間の差も生じないため時間通りに部品をつくることができるようになりました。さらに、加工精度が向上し削り代を少なくする考え方やNCで加工しやすい形状に製品や部品を設計変更するなど機械加工に対する新しい概念も生まれました。また、NC工作機械が普及するにともない、加工形状の輪郭を座標化し、プログラム化する「NCプログラマー」と呼ばれる専門職も誕生しました。工作機械を手動で操作する作業者は減少し、生産現場の風景が「手作業から自動化へ」と一変したのもこの頃です。

NC(数値制御)
加工形状の輪郭を座標値(数値情報)に置き換えるという考え方がNC(数値制御)

 

NC工作機械が開発されてまもなく、ドリルやエンドミル、正面フライスなど複数の刃物(切削工具)を自動で交換する機能を有し、面削り、溝削り、穴あけ、ねじ切りなど複数の加工を1台で行うことができる工作機械(フライス盤)がアメリカで誕生し、生産性が極めて高くなりました。これが「マシニングセンタ」の起源です。

日本工業機械(JIS)では、マシニングセンタを「主として回転工具を使用し、フライス削り、中ぐり、穴あけ及びねじ立てを含む複数の切削加工ができ、かつ、加工プログラムに従って工具を自動交換できる数値制御工作機械」と定義しています。

 

NCの開発により手動による加工作業からプログラミングによる加工作業に変化
NCの開発により手動による加工作業からプログラミングによる加工作業に変化

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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