工具の通販モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 荒加工,中仕上げ加工,仕上げ加工

マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

6-2 荒加工、中仕上げ加工、仕上げ加工

機械加工(工作機械を使った加工)は図面に指示された範囲内に寸法精度(寸法許容差)、表面粗さ、幾何精度(平面度、直角度、平行度、同心度など)を仕上げなければいけません。量産加工では加工精度の安定性(バラツキが小さいこと)も必要です。

機械加工において加工精度と安定性を追及するためには加工工程を(1)荒加工、(2)中仕上げ加工、(3)仕上げ加工に分け、各工程で目的をしっかり実行することが大切です。

荒加工

荒加工は短時間で、不要な余肉を削ることが第一目的です。このため、大径の切削工具を使用して主軸の動力範囲内でバリバリ削ります。寸法精度、表面粗さ、幾何精度、安定性は二の次です。荒加工の目的の一つに、工作物の内部に残存した応力(内部応力)を解放させることがあります。工作物によっては製造過程や現状の形になる過程(前工程)で応力が蓄積しています。内部応力が残存したままでは形状が歪んでしまうことがあります。残留応力を解放するためには切削する箇所は偏りなく、できる限り均等に削ること、十分な中仕上げ代を残すことがポイントです。

荒加工

荒加工では工作物の応力を開放させる(反りを出させる)

 

中仕上げ加工

中仕上げ加工は仕上げ加工の準備を行う加工で、切削力や切削熱が工作物に作用しないよう小径の切削工具を使います。切削工具は大径になるほど工作物との接触面積が増えるため、切削力、切削熱ともに高くなります。工作物が歪むのは工作物に蓄積した内部応力のほか、工作物に作用する切削力と切削熱も原因の一つです。中仕上げ加工は荒加工で工作物に伝わった切削熱を冷ますことも目的の一つです。長さ100mmの鉄鋼は温度が1℃変わると、約0.001mm(1μm)変化しますので、切削後の温度が常温よりも20℃高かったとすると、寸法は約0.02mm膨張していることになります。極めて高い加工精度が要求される現在の機械加工では温度による寸法の変化は無視できません。

 

仕上げ加工

仕上げ加工は一発でビシッと決めることが大切です。仕上げ加工で最も大切なのが「仕上げ代」です。仕上げ代は仕上げ加工で削り取る取り代のことですが、大切なことが2つあります。(1)一つは厚さや形状が均一であることです。たとえば、びびり痕が発生した表面は小さな凸凹模様になっているため僅かに仕上げ代が異なります。びびり痕は中仕上げ加工でしっかりと除去しておくことが大切です。(2)仕上げ代を切削工具の切れ刃がしっかり食い込む量(厚み)にしておくことです。仕上げ代が薄すぎると、切削工具が工作物に食い込まず上滑りすることになり、表面粗さが悪くなります。ホーニングがある切れ刃(チップ)を仕上げ加工に使用するときの仕上げ代はホーニング量以上が目安です。切れ刃(チップ)の形状に適した仕上げ代を残すことが大切です。

画像名

仕上げ加工では工作物に負荷(ストレス)を掛けずに加工する

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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