工具の通販モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 切削油剤の種類その1(不水溶性切削油剤)

マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

6-5 切削油剤の種類その1(不水溶性切削油剤)

切削油剤の種類は原液のまま使用する「不水溶性切削油剤」と、水に希釈して使用する「水溶性切削油剤」の2つに大別されます。不水溶性切削油剤は潤滑性や耐溶着性を重視する場合に、水溶性切削油剤は冷却性能を重視する場合に使用します。近年のマシニングセンタは主軸の回転数が高く、切削熱が高くなる傾向にあるため潤滑性よりも冷却性が重視されることから水溶性切削油剤が多用されています。このため、切削油剤はいつから慣用的に「クーラント」と呼ばれるようになりました。

不水溶性切削油剤および水溶性切削油剤の主成分(基油:ベースオイル)には鉱物油、植物油、化学的に配合された合成油のいずれかが使用され、潤滑性、耐溶着性、浸透性などを向上させるために数種類の添加剤が投与されています。

日本産業規格(JIS)では、不水溶性切削油剤を含有成分(極圧添加剤の有無など)と銅板に対する腐食性から4種類(N1、N2、N3、N4)に分類し、N1、N2、N3を不活性タイプ、N4を活性タイプとしています。

  • N1は4種類のうち最も不活性で、腐食しやすい非鉄金属(銅および銅合金)や鋳鉄の加工に適しています。
  • N2およびN3は、最も汎用的で切削加工全般に適しています。
  • N3およびN4は極圧添加剤として硫黄が投与されています。耐溶着効果が高く、良好な仕上げ面が得られやすいことが特徴で、難削材の加工に適しています。とくにタップ加工、リーマ加工、ブローチ加工など切削速度が低い加工では効果的です。ただし、硫黄は鉄系材料を変色させることがあり、アルミニウム合金や銅合金では黒くなるので使用には注意が必要です。

このように、日本産業規格ではN1~N4の4種類を定めていますが、切削油剤を製造するメーカは加工方法や工作物材質に特化した様々な油剤を開発しており、実際には日本産業規格の分類に該当しないものも多く市販されています。

不水溶性切削油剤は水溶性切削油剤に比べて腐敗しにくく、水垢が発生しないことが利点ですが、切削熱によって引火する恐れがあるため24時間無人・自動運転される生産現場では注意が必要です。また、不水溶性切削油剤は消防法による危険物に該当するものが多いため、法令に基づいた保管、措置が必要です。

不水溶性切削油剤はマシニングセンタの切削油剤タンクの容量と同じ量だけ必要になりますが、水溶性切削油の場合は水道水に希釈して使用するため、原液は多量に必要ありません。このため経済的観点では水溶性切削油剤が優位です。

 

不水溶性切削油剤の分類

不水溶性切削油剤
油性形
N1種
不活性極圧形
N2種
不活性極圧形
N3種
活性極圧形
N4種
鉱油と脂肪油から成り、極圧添加剤を含まないもの N1種の成分を主成分とし、極圧添加剤を含むもの(銅板腐食が150℃で2未満のもの) N1種の成分を主成分とし、極圧添加剤を含むもの(銅板腐食が100℃で2以下・150℃で2以上のもの) N1種の成分を主成分とし、極圧添加剤を含むもの(硫黄系極圧添加剤を必須とし、銅板腐食が100℃で3以上のもの)

 

不水溶性切削油剤の分類と適用

JISによる分類 適用例
種類 極圧添加剤 銅板腐食
100℃、1h 150℃、1h
N1種 1号~4号 含まない - 1以下 非鉄金属(銅および銅合金)の加工
鋳鉄の切削加工
N2種 1号~4号 含む - 2未満 汎用油剤、一般切削加工に幅広く使用
N3種 1号~8号 含む 2以下 2以上 難削材の低速加工
仕上げ面精度の厳しい加工
N4種 1号~8号 含む 3以下 -

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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