マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

5-2 運動軸の制御方式

近年のマシニングセンタは0.001mmや0.0001mmの単位まで座標値を指令することができますが、指令した座標値と実際の座標値がホントに一致しているのか疑問に思ったことはないでしょうか? マシニングセンタには指令した座標値通りに運動しているか否かを確認・制御する機能が備わっています。この制御方式を「フィードバック制御」といいます。

位置決め精度の違い

位置決め精度の違い

 

マシニングセンタに使用されているフィードバック制御には、主として、(1)セミ・クローズドループ方式と(2)フル・クローズドループ方式の2種類があります。

(1)セミ・クローズドループ方式はACサーボモータのスピンドル(軸)またはボールねじの回転角度をロータリエンコーダという装置で検出し、運動体(主軸頭やテーブル)の位置を予測する方法です。セミ・クローズドループ方式は構造が簡単で応答が速いことが利点ですが、反面、ボールねじのピッチ誤差(製品精度)や高速回転によるボールねじの膨張・伸縮、たわみ、バックラッシュなどが影響し、指令値と実際の座標値に誤差が生じる場合があります。ただし近年では、ロータリエンコーダの取り付け位置の工夫や発熱、たわみの抑制、バックラッシュ補正を有したボールねじが使用されるなどの対策が講じられ、事実上ほとんど誤差が発生しません。このため、多くのマシニングセンタはセミ・クローズドループ方式を採用しています。

セミ・クローズドループ方式

セミ・クローズドループ方式

 

(2)フル・クローズドループ方式は実際に運動するテーブルやサドル(運動体)の位置を直接検出する方法です。フル・クローズドループ方式は運動体の位置を検出するスケール(磁器スケール、光学スケール、リニアスケールなど)を固定部(運動体の案内部)に取り付ける必要があり構造が複雑になりますが、運動体の実際の位置を検出するため指令した座標値と実際の座標値に誤差が生じにくいことが特徴で、0.0001mm単位の高い位置検出が可能です。このため、超精密マシニングセンタで採用されています。

フル・クローズドループ方式

フル・クローズドループ方式

 

(1)セミ・クローズドループ方式と(2)フル・クローズドループ方式を併用したフィードバック制御を(3)ハイブリッドループ方式といいます。ハイブリッドループは運動体が移動中はセミ・クローズドループ方式で制御し、停止時にクローズドループ方式で制御する方式です。ACサーボモータと外部スケール間の剛性が低いなど、どちらか一つの方式では不安定な場合に使用されています。

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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