マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第4章 マシニングセンタの要素技術

4-1 主軸の駆動方式

マシニングセンタは切削工具(刃物)を取り付けた主軸を高速に回転させることによって工作物を削ります。このため主軸はマシニングセンタにとって最も重要な要素部品で、主軸の性能は加工精度に直結します。主軸に求められる性能は主として、回転速度(回転数)、トルク、回転精度(振れ精度)、剛性、バランス、低発熱、静穏性、起動・停止時間の短さなどが挙げられます。

マシニングセンタの主軸に多用されている駆動方式には(1)ACサーボモータ、(2)ビルトインモータ、(3)エアースピンドルの3種類があります。

(1)ACサーボモータは無段変速が可能で、低速回転から高速回転までほぼ同じトルクで回転することでき、長時間の連続運転でも発熱を抑えられる特性を持ちます。サーボ(Servo)はラテン語の「servus(奴隷)」が語源で、指示通りに動く召使いという意味を持っています。

ACサーボモータの回転は「歯車を介して主軸に連結する構造」と「カップリングを介して主軸に直結する構造」の2種類があります。前者は歯車の伝達比を利用するによって低速回転における十分なトルクを伝えることができる一方、高速回転では歯車の振動が大きくなることが欠点です。後者は15000min-1以上の主軸で採用されることが多いですが、カップリングの軸心ずれや構造的な組み立て誤差があると振動が発生します。

ACサーボモータ

20000min-1以上の高速回転仕様の主軸にはモータを主軸と一体化させたビルトインモータが多用されています。

 

(2)ビルトインモータは主軸に内蔵されたモータで、ビルトインは「組み込む、内蔵する」という意味です。ビルトインモータは主軸自身にロータの働きを持たせ、モータを主軸に組み込むことにより小型化でき、回転運動に機械的な構造を介さないため高速回転による振動が抑制される利点がある反面、モータの発熱が直接主軸に伝わるため主軸の冷却対策を行う必要があります。このためビルトインモータは主軸内部に温度制御された水や油を循環させる機能が備わっています。ビルトインモータは「高周波モータ、DDS(ダイレクト・ドライブ・スピンドル)」と呼ばれる場合もあります。

ビルトインモータ

30,000min-1以上の超高速回転仕様の主軸にはエアースピンドルが使用されています。

 

(3)エアースピンドルは圧縮空気が駆動源で、回転精度が高いことや主軸の熱変位が少ないことが利点ですが、トルクが小さく切削抵抗により回転数が変動するや高価であることが欠点です。歯医者さんが歯を削るときに使用しているのがエアースピンドルです。歯医者用さんが歯を削るために使用するスピンドルはエアースピンドルで、通常300,000~500,000min-1で回転します。

エアースピンドル

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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