マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第4章 マシニングセンタの要素技術

4-3 直線運動の駆動方式

マシニングセンタのテーブル、サドル、コラム、主軸頭の運動部の駆動方式は主として、(1)ACサーボモータとボールねじの組み合わせと、(2)リニアモータの2種類に大別されます。

 

(1)ACサーボモータとボールねじの組み合わせ

ACサーボモータとボールねじの組み合わせ

ACサーボモータとボールねじを締結することによりACサーボモータの回転運動を直線運動に変換します。ACサーボモータは主軸の駆動源にも採用されており、回転速度に関わらず安定してトルクを発生させることができ、正確な回転角度、回転速度を制御できるモータです。ボールねじはねじ溝の付いた軸とナット間でボールがころがる仕組みのため摩擦抵抗が小さく、機械効率が高い(動力損失が少ない)直線運動が可能です。また。ボールに適度な圧力を加えることで剛性を高くし、バックラッシュを低減できます。一方、転動体であるボールは点接触のため衝撃に弱く、減衰性に劣り、高速運動を行うとボールの回転による微音や振動が発生すること、内部に異物が侵入すると運動精度が低下するなどが欠点です。

ACサーボモータとボールねじはそれぞれが独立した要素部品として広く流通しており、コストが安価なため、多くのマシニングセンタで採用しています。

 

(2)リニアモータ

リニアモータ

リニアモータは磁石(永久磁石や電磁石)の引力や反発力を利用してモノを直線的に動かす動力の名称です。リニアは直線という意味です。モータという名称ですが私たちがイメージする「モータ」はついておらず、「動力」という意味でモータと呼んでいます。ボールねじは高速に回転すると、遠心力によりねじの軸がたわむこと(弾性変形すること)や振動の問題がありましたが、リニアモータは回転機構(ねじやナットなどの機械要素)がないため無条件に高速で運動することができます。また、駆動部のスペースを小さくできることも利点です。リニアモータの速度は推進コイルに流す電流の周波数によってコントロールできます。

リニアモータはACサーボモータとボールねじの組み合わせよりも運動速度(加速度含む)、運動精度が高い一方、案内部(固定側)と駆動部(運動側)が非接触のため剛性が低く、切削抵抗が大きい重切削には適しません。リニアモータ駆動は半導体など電子部品や医療部品などの加工に使用される超精密マシニングセンタに採用されています。

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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