工具の通販モノタロウ マシニングセンタの基礎講座 主軸の性能(基底回転数)

マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

5-1 主軸の性能(基底回転数)

マシニングセンタのカタログや取扱説明書を見ると色々な細目について記載されています。この中で主軸の性能は切削工具の選定や切削条件の設定の基準になる大変重要な情報です。たとえば図のように、電動機(30分/連続)15/11kW、トルク(25%ED、連続)45.7/31.3N・mと記載されていたとします(数値は一例です)、

動力とトルクの表記

電動機(30分/連続) 15/11kW
トルク(25%ED/連続) 45.7/31.1N・m

表記の見方として、電動機は動力(主軸を回転させるために必要なエネルギ)を表しており、この電動機(モータ)の場合、30分であれば15kWの動力、連続運転であれば11kWの動力で使用できるという意味を示します。

トルクは主軸を回転させるための力で、EDは「負荷時間率」といい、1サイクルあたりの運転時間(通電時間)を百分率で表したものです。例のように「25%ED」という記載では、たとえば1サイクル5分の場合、1分は停止しなければいけないという意味になります。つまり、この例では25%EDの条件では45.7N・mまで使用でき、連続運転であれば31.3N・mまで使用できるという意味を示します。

ED(負荷時間率)

ED(負荷時間率)

EDは負荷時間率といい,1サイクルあたりの運転時間(通電時間)を百分率で表したもの

ED=(t1/t0)x100

(例)t1=5秒、t0=20秒なら25%EDとなります。
%ED=(5/20)×100=25

 

次に、主軸特性を示すグラフの見方です。動力は回転数が高くなると上昇し、一定の回転数に達すると安定することがわかります。動力が安定する回転数を「基底回転数」といいます。大前提として、1分間あたりの切りくず体積と切削動力は相関関係にあるため、切削条件(回転数、送り速度、切り込深さ)を設定する場合には、連続運転が可能な動力未満になるように考慮することが大切です。また、たとえば、正面フライスを使って平面加工する場合、大径の正面フライスでは回転数が低くなるため、使用できる動力も低くなりますが、小径の正面フライスでは回転数が高くなるため、使用できる動力も高くなります。つまり、小径の正面フライスを使ったほうが1分間あたりの切りくず体積を大きくすることができることがあります。切削工具の大小だけで1分間あたりの切りくず体積を考えてはいけません。

一方、トルクは回転数が基底回転数未満で安定し、基底回転数を越えると徐々に減少することがわかります。ボーリング加工など大径の切削工具を使う場合には、切削トルクが主軸の所有するトルク未満になるようにしなければ、加工中主軸が停止してしまいます。トルクは大径の切削工具が使用できることを換言したもので主軸剛性の指標となります。

 

動力とトルクの関係

動力とトルクの関係

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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