建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第4章 配管の接合方法の種類

4-4 配管機器・固定支持材料

配管工事は、鋼管(SGP)のねじ接合配管工事を例にとると、通常は1.配管材料の選定⇒2.配管の切断⇒3.ねじ加工(ねじ切り)⇒4.ねじ込み作業⇒5.配管取りつけ作業⇒6.漏洩試験の実施⇒7.試運転調整というプロセスを踏むことになる。このプロセスの5で必要不可欠な補助部材が、実は「配管機器・支持材料」である。

図-1 配管工事の基本プロセス

建築設備配管は、建築の躯体(ほとんど鉄筋コンクリート)に水平・垂直に吊支持・固定するが、そのため補助部材には以下のようなものがある。

(1)配管用吊バンドと吊ボルト:配管を「吊バンド」を利用して、上部(上階の床スラブ)から「吊ボルト」で吊支持する。かつては、鉄筋の両端に「切削ねじ加工」を施し、「錆止め塗装」をした吊ボルトが使用されていた。

しかし、現在では「全ねじ転造加工」を施した「亜鉛メッキ吊ボルト」を現場で適当な寸法に切断し、使用するようになってきている。

図-2 配管吊バンドと吊ボルト

【注意事項!】「共吊配管支持方法の禁止」

 配管吊支持方法の中に、「共吊」という方法がある。これは配管を「団子状」に何台も吊支持する方法であるが、絶対に採用してはならない。その理由は、最上部の「吊支持棒」に過剰な配管荷重がかかってしまうからである。

図-3 共吊配管支持方法の禁止!

(2)インサート金物類:この金物は、上記の「吊ボルト」を吊り下げるために使用するもので、事前に準備した「配管施工図」を元に、「スラブコンクリート」を打設する以前に「床型枠上」に布設しておく。どの業者のインサートか識別する目的で、業者別(電気設備業者・衛生設備業者・空調設備業者など)に、「色分けしたインサート」を打設していた。現在では、「鋼製インサート」が採用されているが、かつては鋳物製の「自在インサート」が使用されていた時代があったが、鋳物の強度が弱いという理由で使われなくなっている。また、最近では、せっかく打設したインサート金物の利用率が悪いという理由で、「あと施工アンカー」の採用が増えてきている。

図-4 インサート施工方法

一方、重量の重い配管やダクトが縦横無尽に走る「主機械室(メインプラントルーム)」などでは、「かんざしボルト」を事前に製作し、「格子状(90cm間隔程度)」に布設しておくとよい。

(3)立てバンド・吊バンド:配管が、「立て管」の場合には「立バンド」、「横走り管」の場合には、「吊バンド(前出)」などで支持するが、特に「ステンレス鋼鋼管」などの「支持バンド」としては、腐食の関係で「合成樹脂で被覆した吊バンド」を使う必要がある。

(4)共通吊支持架台:配管を単独吊支持する代わりに、複数の配管を「共通吊支持鋼材架台」の上に並べて配管するときによく採用される。

ただし、注意して欲しいのは「3点吊支持架台」は絶対に使用せず、必ず「2点吊支持架台」を採用すること。その理由は、「3点吊支持架台」を採用すると、3本の吊ボルトが負担する荷重が不均等となりやすいからである。

図-5 「3点吊ボルト支持」は不可!

(5)共通床支持架台:床や配管トレンチなどに、「複数の大口径配管」を配管する場合によく採用される「共通床支持架台」である。

図-6 共通床支持架台上の配管事例
執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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