建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第3章 配管の接合方法の種類

3-9 ステンレス鋼管(SUS)の接合法

筆者が建築設備業界に飛び込んだ、1965年(昭和40年代)は、ステンレス鋼管(SUS、以降SUS鋼管と称す)は、建築設備配管工事に採用するには、あまりに価格が高く(材料費・配管工費とも)、「高嶺(高値?)の花」であった。

最近では、SUS鋼管の長所が高く評価され現場での施工法も確立されたこともあって、筆者の「独断」と「偏見」かも知らないが、建築設備配管材料としての採用率は、急激に増えている(注)のではなかろうか?

注:本来は「定量的な表現(SUS鋼管の採用率:○○%)」とすべきであろうが、筆者のところには、あいにく「SUS鋼管採用率」のデータがなく、”急激に増えている”というような「定性的な表現」で申しわけありません。

ところで、建築設備配管用のSUSとしては、「一般配管用ステンレス鋼管(JIS G 3448J:SUS-TPD)」と「(JISG 3459:SUS-TP)」の2種類があると既述したが、ここでは建築設備に最もよく採用されている前者:「一般配管用ステンレス鋼管」の接合法を前提に話を続けていきたい。

1:SUS鋼管の切断方法

SUS鋼管を切断する場合、管接合に適合する「切断面」を確保する必要があるため、管軸に対して垂直で「たれ・バリ」がなく、切断面が「楕円化」しないように配慮する必要がある。したがって、その「切断工具」にもいろいろな種類があるが、代表的な切断工具には、(1)パイプ固定式ロータリカッタ(ハンドチューブカッタ)、(2)パイプ回転式管ロータリカッタ、(3)プラネタリー切断機(名前の由来:衛星のように回転しながら管切断を行うため)、(4)バンドソー切断機などがある。

ちなみに、上記(3)および(4)の切断方法は、SUS鋼管の口径が大きい場合や自動溶接を適用する場合に採用される。

図-1 SUS鋼管の管切断工法

 

2:SUS鋼管の接合法の種類

SUS鋼管接合法には、「物理的接合法」と「機械的接合法」とがあり、前者には、(1)はんだ付け接合法と(2)溶接接合法が、また後者は、「メカニカル接合法」と総称され、(1)ワンタッチ式、(2)プレス式、(3)ナット式、(4)ハウジング式、(5)ルースフランジ式の5種類に分類されている。

1)物理的接合法

(1)はんだ付け接合法(Soldering Joint):この接合法は「SUSソルダー」をトーチランプで溶かして銅管の場合と同様に、「差しろう」して接合を行う方法である。

この方法は、建築設備用配管には、後述する「メカニカル接合法」や「ハウジング接合法」に押されて、現在ほとんど採用されていない。

(2)溶接接合法(Welding Joint):SUS鋼管の溶接接合法には、肉厚のSUS鋼管の場合には「被覆アーク溶接」が採用される場合もある。しかしながら、建築設備配管に使用されるSUS鋼管は、鋼管(SGP)などに比べると管肉厚が極端に薄いため、「突合せ溶接(butt welding)」の「TIG(注)溶接」が採用される。

SUS鋼管の溶接接合法は、接合部の強度が「母材(Base Metal)」の強度より強く、最も確実に接合できるので「信頼性」が高く、後述する「物理的接合法」とともに、SUS鋼管接合法の双璧といっても過言ではない。

注:TIG溶接=Tungsten Inert Gas Arc Welding(JIS Z 3001)

図-2 SUS鋼管のTIG溶接の原理

 

【豆知識】SUS鋼管の現場溶接成功のキーポイント!

SUS鋼管を現場溶接する場合には、「アルゴンガス(または窒素ガス)」による「バックシールド」が不十分であると、「溶着材の酸化」による「溶接欠陥(酸化スケール)」が溶接部に生じる。したがって、溶接作業中は管内の「酸素濃度」が、少なくとも「100ppm(0.01%)」以下になるように管理して、SUS鋼管の溶接を実施すること!

3:SUS鋼管の機械的接合法(メカニカル接合法)

この接合方法には、既述のようにメーカーによって、多種多様な方法がある。ここではその代表的なものを、紙面の都合上[挿絵]のみで紹介しておくが、いずれにしても「ステンレス協会規格(SAS)」に基づく認定品でなければならない。

例えば、接合部品の装填順序を誤ったり、また、ガスケットなどを逆に装填したりすると「漏水の原因」ともなるので、各メーカー作成の「配管施工マニュアル」などの技術解説書をよく理解した上で施工する必要がある。

各種メカニカル接合に使用される管継手

 

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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