建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第1章 建築設備と建築設備配管

1-2 配管方式の分類

配管は、人体例えれば、建築設備の各所に「血液」を送ったり戻したりする「血管」そのものであると既述したが、配管の諸方式は次のように「層別」することができる。

(1)流水方式による分類

1.一過式配管と2.循環式配管に大別できる。

1は、流体を回収せず、そのまま使い捨てにする配管方式であるが、衛生設備における「給水設備配管」がその代表的なものである。 また、衛生設備における「排水管」は、一般的に「重力式排水方式」を採用しており、排水を建物外に排出する、「一過式配管」ということができる。2は、流体を送り出して元の位置までもどして「循環再使用」する配管方式で、最も一般的な配管方式である。

【豆知識】

「満流配管(full flooded system)」と「半満流配管(semi-flooded system)」  配管内を内部を流れる流体の側面から見ると、「満流」と「半満流」とに大別される。 「満流」とは流体が配管内を完全に充満した状態で流れる状態を指し、「半満流」とは流体と期待が半々の状態、あるいは「気液混合」の状態で流れる状態をいう。

空調設備では、「蒸気還水管」を除き、ほとんど「満流配管」であるが、衛生設備では、「排水管」のように「半満流配管」となる場合が多い。

(2)回路方式による分類

1.開放式配管(例:空調熱源の蓄熱槽配管)、2.半密閉式配管(例:空調設備の開放式冷却塔配管)、3.密閉式配管(空調設備の冷温水循環配管)の以上3つに大別できる。

(3)還水方式による分類

1.直接還水方式配管(例:放熱器やファンコイルユニット(FCU)へ熱媒を送り、そこから直に熱源装置まで還水する配管、配管工事費は安いが、各末端機器での流量が不均一になりやすい)、別名「ダイレクト・リターン配管方式」とも呼ばれている。 2.逆還水方式配管(例:配管工事費は多少高くなるが、末端機器の流量数調整が簡単なので、数多くの放熱器やFCUが連なっている配管系に採用される)、別名「リバース・リターン配管方式」と呼ばれている。以上の2つの配管方式に大別できる。

(4)搬送方式による分類

1.2管式配管(往き管と還り管の二本だけの配管)、2.3管式配管(往き管が冷水管と温水管の2本で還り管は共通の配管)、3.4管式配管(往き管が冷水管・温水管)の2本、還り管が冷水管・温水管の2本ある配管)、 4.定流量方式配管(流量制御弁に2方弁を採用する配管)、5.変流量方式配管(流量制御弁に3方弁を採用する配管)の5つに大別できる。

注:(4)の2および3の配管方式は、かってよく採用されたことがあったが、省エネルギ―と設備費が高くつくなどの理由から、現在ではほとんど採用されなくなった。

現在では、中小事務所ビルにとどまらず、述べ床面積:10,000m²を超えるような大型事務所ビルなどにも「ビルマルチ空調システム」が導入されるようになってきており、優秀な「冷媒配管工」に対するニーズが高まっている。

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

目次をもっと見る

『配管・水廻り部材/ポンプ/空圧・油圧機器・ホース』に関連するカテゴリ