工具の通販モノタロウ 配管・水廻り設備部材 建築設備配管工事の基礎講座 内面塩ビライニング鋼管:溶接配管接合法

建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第3章 配管の接合方法の種類

3-11 内面塩ビライニング鋼管:溶接配管接合法

本項の冒頭に特記しておきたいことは、本管の65A以上の大口径管の「溶接接合法」には、どうしても高熱の発生が伴うので、可能な限り「高熱の影響」を避けることが不可欠である。特に、「内面塩ビライニング鋼管同士」の「直接直付け接合」は、絶対に行ってはならない。以下で述べる「溶接フランジ接合法」を必ず採用すること。

(1)内面塩ビライニング鋼管の切断作業:鋼管の切断は、ねじ接合の場合と同様、1.バンドソー切断機や2.メタルソー切断機を使用して管軸に直角に切断する。

(2)接合用フランジの溶接作業:内面塩ビライニング鋼管の「フランジ接合」を可能にするためには、まず塩ビライニング鋼管に「フランジ接合」を行う。

この場合、図-1に示すように、まずフランジボルト穴の位置合わせを行った上で、「角肉(すみにく)アーク溶接」を行う。この場合、内面の「塩ビ部」は溶接熱によって、焼けて変質するので、その部分をできるだけ小範囲に抑えるため、管内に「水で濡らしたウエス」を挿入して溶接を行う。

図-1 塩ビライニング鋼管へのフランジ溶接

(3)変質した塩ビ管部分の除去作業:受熱により変質した塩ビ部は、「軟化」しているうちに、ナイフなどで切断するか、グラインダーなどで切除する。この際、管軸に直角に切り取るように注意し、切り取り面には「補修ライニング」を行いやすいように、「面取り」を実施しておく。塩ビライニング鋼管のフランジ溶接時の「塩ビ管部の焦げ長さ」は、おおよそ表-1に示す通りである。

表-1 塩ビ管部の焦げ長さ範囲

管サイズ 焦げ長さmm
65A 30~50mm
80A 40~60mm
100A 40~60mm
125A 50~80mm
150A 50~80mm
200A 70~100mm
250A 70~100mm
300A 80~120mm
350A 80~120mm

(4)研磨および面取り作業:塩ビ管を削除した「鋼管内面」は、「グラインダー」で鋼管地肌がよく出るまで研磨する。また、管端は「ねじ接合」の場合同様、フランジ面より突起した「ビート部」は削り取り、同一面に仕上げた上、「面取り加工」を実施しておく。

(5)前処理作業:研磨・面取り時に付着した「錆び」は「工業用アルコール」または「アセトン」で十分にふき取っておく。この工程を怠り、必ず実施しないと、塩ビ管の「接着効果」を妨げ、後々トラブルの原因となる。

(6)挿入短管の寸法合わせ作業:「スリーブ短管」を管内に軽く挿入し、図-2に示すように、止まった位置を決めてそこに「標線(mark line)」を入れる。

図-2 挿入短管の寸法合わせ

(7)接着剤塗布と短管の挿入作業:鋼管内面、フランジ面および短管部の鍔返し面に「ゴム系接着剤」を塗布し、十分に乾燥させた後、「標線」まで短管を素早く挿入する。

(8)短管部加熱と内面圧着作業:塩ビライニング鋼管の外面および内部を「トーチランプ」か「ガスバーナー」で徐々に加熱する。加熱は、短管部を焦がさないように注意し、図-3に示すように短管部が膨張し、指で押さえてゴム状になるまで行う。

図-3 短管部の加熱と内面圧着

(9)短管部切断作業:次にはみ出している「短管部」は、フランジ面への「鍔返し代」を残して切断する。切断は、再度短管部を軟化させ、表-2の「カッテイング寸法」に準拠して切断すると、現場でも管単にこの作業を実施することができる。

表-2 管端部塩ビ管の鍔返し代

管サイズ 鍔返ししろmm
65A 25mm
80A 25mm
100A 25mm
125A 25mm
150A 25mm
200A 25mm
250A 30mm
300A 30mm
350A 30mm

(10)鍔返し作業および内面圧着作業:軟化した短管部が「冷却硬化」しないうちに、均一に拡大しながら、「鍔返し作業」を実施する。その際、鋼管内部にある部分も十分に圧着する。なお、「鍔返し作業」は、素早く行う必要があるが、短管部が硬化しはじめ、「ゴム状態」を失いつつある時に、無理に拡大したりすると、「亀裂」が生じることもある。その場合、再度加熱軟化させながら「鍔返し作業」を実施する必要がある。

(11)合フランジ固定作業:「鍔返し作業」完了後、速やかに「合フランジ」を取り付け、「自然冷却」させて、「鍔返し部」と「ガスケットグランド面」を平滑に成型させる。約20分程度で「合フランジ」を取り外せるが、急激な水冷などは避けること!

(12)ビニル溶接による補修作業:「鍔返し作業」が終了した後、「原管の切断面」と「鍔返し管の切断面」の間を、図-4に示すように、「ホットジェットガン」にて「ビニル溶接」を施す。

図-4 鍔返し内面補修の種類

 


執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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