建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第2章 建築設備用配管材料の種類

2-8 硬質ポリ塩化ビニル管

「プラスチック管」は、「硬質ポリ塩化ビニル管」と「ポリオレフィン管」に大別される。「硬質ポリ塩化ビニル管」にも多種多様な品揃えがあるが、この中でもここで紹介する「硬質ポリ塩化ビニル管(JIS K 6741・VP)」(以下塩化ビニル管:VPと称す)、が最も代表的なものである。

塩化ビニル管は、一般流体輸送管(JIS K 6742に規定する「水道用硬質塩化ビニル管」を除く)に使用され、使用圧力によって以下のようVP・VM・VUの3つに区分される。厚さは同じ厚さであれば、VUはVPおよびVMより薄い。

表-1 硬質塩化ビニル管の種類

管の種類 常温における使用圧力
VP 1.0MPa[10.2kgf/cm2]
VM 0.8MPa[8.2kgf/cm2]
VU 0.6MPa[6.1kgf/cm2]

上記の「塩化ビニル管」の他に、「水道用硬質塩化ビニル管(JIS K 6742)」があり、使用圧力0.75MPa(7.6kgf/cm2以下)の水道の配管に使用される「硬質塩化ビニル管(VP)」と「耐衝撃性硬質塩化ビニル管(HIVP)」がある。

硬質塩化ビニル管は、腐食に強い配管材料ではあるが、一般的に「耐衝撃性」に乏しく(HIVP管が開発されたが・・・)、傷がつきやすく、そこを起点に亀裂・破断が起こりやすい。さらに、「線膨張係数」が鉄の約7倍もあり、「伸縮性対策」が必要となる等、取り扱い上の注意点が多い配管材である。 また、「ソルベント・クラッキング現象(後述)」などの障害や、「有機溶剤」に膨潤溶解されて、例えば殺虫剤・塗料・防腐剤(クレオソート油)・白蟻駆除剤など、同じ有機溶剤でも温度・濃度により侵され方が異なる。 したがって、これらの有機溶剤に直接接触しない、例えばよくある例ではあるが、「クレオソート油」を塗布した「建築木製根太」の上にVPを直に布設しないなどの、施工上の注意が不可欠である。これらの注意点は、他の樹脂管にも共通する事項なので、是非心に留めておく必要がある。

硬質塩化ビニル管・継手類は、ひび割れ・ねじれ、その他の損傷がないかどうかを点検し、適切なる配置場所に運搬・配置・保管する必要がある。

【硬質塩化ビニル管の保管上の注意事項】

1.保管方法:管は反り・変形等の防止および安全確保のため、屋内に井げた積み・千鳥積み等の「横置き」とし、「ごぼう積み」は避けること!また、端部には「荷崩れ防止」のため、「歯止め材」を掛けること。

2.管の屋外保管:やむを得ず屋外に保管する場合には、管のそり・扁形や光による「劣化防止」のため、簡単な屋根をかけるか、熱気のこもらない方法でシートをかけて「直射日光」を避けること。

3.管の立て掛け保管:やむを得ず「立て掛け保管」をする場合には、安全確保のため「ロープ掛け」などの「倒れ防止措置」を施し、併せて管に変形が生じないように配慮すること。

4.継手の保管:継手も管と同様屋内保管とし、やむを得ず屋外に保管する場合には、シート掛け保護をすること。

硬質塩化ビニル管(VP)に使用される管継手には、以下のような4つの種類がある。

1.硬質ポリ塩化ビニル製管継手:ポリ塩化ビニル樹脂を「射出成型機」により製造した製品(A型継手)とポリ塩化ビニル管を加工した製品(B型継手)とがある。

2.FRP製管継手:硬質塩化ビニル製管継手の「大口径分野」を補完する管継手で、既述の硬質ポリ塩化ビニル製管継手と同様に耐食性に優れている。

3.鋳鉄製管継手:「ダクタイル鋳鉄」製の硬質ポリ塩化ビニル管用継手である。耐食性を保持する目的で、内面に「エポキシ樹脂粉体塗装」を施した製品もある。

4.鋼板製管継手:FRP製管継手と同様に「大口径管用継手」で、加工性に優れていることから種々の継手が作られている。

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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