マシニングセンタの基礎講座
2-1 自動化の仕組み:ATC(オートマチック ツール チェンジャ、自動工具交換装置)
ATCはAutomatic Tool Changerの頭文字を取った略称で、自動工具交換装置のことです。マシニングセンタやターニングセンタ(主として、工作物を回転させ、旋削加工など多種類の機械加工を数値制御で行うことができる工作機械)は切削工具を自動で交換できる装置を備えています。
1940年代にアメリカでNC(数値制御)が開発され、工作機械をハンドルで動かす時代からNCプログラムで動かすことができるようになり、機械加工に自動化が始まりました。しかし、製品を仕上げるためには平面加工や溝加工、穴あけ、ねじ加工など色々な形状を削る必要があるため、複数の切削工具を使用しなければならず、NCが開発された当初は加工形状に合わせて人が切削工具を取り代えていました。このため、人が工作機械から離れることができず、完全な自動化を行うことはできませんでした。そこでNCに少し遅れて開発されたのがATC(自動工具交換装置)です。
ATCには主として、(1)タレット式と(2)マガジン式の2種類があります。
(1)タレット式
タレット式は円周状に切削工具を収納するための差込口(ツールポットといいます)を備え、使用する切削工具が円周上を旋回し、主軸の位置(立て形マシニングセンタでは切削工具が垂直に向く位置)まで移動して、主軸に装着される方式です。タレット式は切削工具と主軸のやり取りにロボットアームを使用しないため、工具交換時間が速いことが利点です。しかし、収納できる切削工具の本数が増えるほどツールポットの円周が長く、大きくなるため、機上に装備するのが難しくなるのが欠点です。ターニングセンタ(NC旋盤)はタレット式の自動工具交換装置を採用しているものが多いです。
(2)マガジン式
マガジン式は人の手と同じ働きをする「ロボットアーム(チェンジアームといいます)」と切削工具を収納する「工具マガジン」を備え、使用する切削工具をチェンジアームを介して主軸に取り付ける方式です。ツールマガジンは機外に設置することができ、大型のものでは切削工具を数100本以上装着できるものもあります。マガジン式は切削工具を収納できる本数が多いですが、チェンジャーアームを介するためタレット式と比較して工具交換時間が遅くなります、また、設置スペースを確保しなければいけません。
切削工具は多いほうが便利ですが、多くなると管理も大変です。少ない本数で加工できる形状、ツールパスを考えることが大切です。
『マシニングセンタの基礎講座』の目次
第1章 マシニングセンタの基礎知識
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1-5直線軸とは?(右手の法則その1)マシニングセンタは切削工具(主軸)や工作物の位置を座標値(NCプログラム)で指令して操作するため、マシニングセンタを操作する場合には座標値の軸となる座標系について知っておかなければいけません。
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1-6回転軸とは?(右手の法則その2)マシニングセンタはX軸、Y軸、Z軸の直線3軸によって工作物の面に対して直角や平行な加工(たとえば平面加工、溝加工、穴あけ加工など)を行うことはができますが、斜めや曲面の加工を行うことはできません。
第2章 マシニングセンタの装備
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2-1自動化の仕組み:ATC(オートマチック ツール チェンジャ、自動工具交換装置)ATCはAutomatic Tool Changerの頭文字を取った略称で、自動工具交換装置のことです。
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2-2自動化の仕組み:APC(オートマチック パレットチェンジャ、自動パレット交換装置)APCはAutomatic pallet Changerの頭文字を取った略称で、自動パレット交換装置のことです。
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2-3切りくず回収の仕組み:チップコンベア機械加工は工作物の不要な箇所を削り取り、目的の形状をつくる加工法です。削り取った箇所は切りくずとなって排出されるため、視点を変えると、機械加工は切りくずをつくっているといっても過言ではありません。