工具の通販モノタロウ ねじの基礎講座 ボルトとナットの強度区分

ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第3章 ねじの強さ

3-3 ボルトとナットの強度区分

規格品のボルトを選定する場合には、JISで強度区分が規定されているので、この意味を理解しておくとよいです(図表1)。 強度区分には、3.6、4.6、4.8、5.6、5.8、6.8、8.8、9.8、10.9、12.9の10段階があり、六角ボルトの頭部にこの記号が刻印されているものもあります(図1)。 たとえば、12.9の意味は、呼び引張強さが12の100倍の1200 N/mm² あること、9は1200×0.9=1080N/mm² まで、塑性変形が発生しないことを意味します。また、最小引張強さとは、ねじの最小引張強さにねじの有効径より求められる円筒の面積である有効断面積をかけたものです。 材料を引っ張ったり圧縮したりするとき、変形量が力に比例しなくなる点を降伏点といいますが、この場所がはっきりわかるのは炭素鋼など一部の材料です。 このほかの鉄鋼材料や銅やアルミニウムでははっきりとした降伏現象を示しません。 引張試験において、試験片が降伏し始める以前の最大荷重を平行部の元の断面積で除した値を上降伏点、試験片が降伏し始めた後にほぼ一定の荷重における最小の荷重を平行部の元の断面積で除した値を下降伏点といいます(図2)。強度区分が3.6~6.8では、下降伏点が規定されています。 また、降伏現象を示さない材料の大きな塑性変形を生ずる前の応力を耐力といい、0.2%の塑性ひずみを生じさせる応力のことを0.2%耐力といいます。強度区分が8.8~12.9では、0.2%耐力が規定されています。 保証荷重応力とは、引張試験で求めた降伏点または耐力の約90%の荷重を加えて15秒間保持した後の塑性変形が12.5μmであることを保証する応力を意味します。

表1 ボルトの強度区分

表1 ボルトの強度区分
  • 図1 六角ボルトに刻印された強度
  • 図1 六角ボルトに刻印された強度
  • 図2 応力-ひずみ曲線
  • 図2 応力-ひずみ曲線

ボルトの強度を十分に発揮させるためには、適切な強度を持つナットとの組み合わせが重要となります。ナットの強度区分はその呼び径に応じた保証荷重応力が規定されています(図表2)。 ナットの呼び高さが0.8d以上のナットの強度区分は、4、5、6、8、9、10、12の7段階で規定されており、それに組み合わせるボルトの強度区分とねじのよび範囲が規定されています。たとえば、ナットの強度区分の8と組み合わせることができるボルトの強度区分は8.8であり、ねじのよび範囲はM39以下です。

表2 ナットの強度区分

表2 ナットの強度区分
執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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