■アナログテスターとデジタルテスターに共通する最大の御法度は、ファンクションを電流測定モードにして電圧を測ることです。これは、テスターで絶対にやってはいけないことです。ほとんどの場合、電流測定モードにしたことを忘れ、誤って電圧を測定してしまうことが多いようです。しかし、この測定モードで電圧を測ると、ヒューズなどの保護回路があるとはいえ、最悪テスターを壊してしまいます。また、高電圧では回路を短絡（ショート）させることになりとても危険です。測定するときには、測定モードと一致しているかを確認することが大切です。さらに、電流測定モードを使うときには、取扱説明書に記載されている測定方法と注意事項を、もう一度確認すると良いと思います。

■アナログテスターでの御法度は、測定レンジを超える入力をすることと、直流の場合に極性を逆に測定することです。どちらも、アナログメーターが振り切れ破損する可能性があります。前者の場合は、指針がフルスケールよりも右へ振り切れます。また、後者のときには指針が零位からさらに左へ振れてしまいます。アナログテスターは、「1-3 テスターの種類」でも述べたように、表示部に可動コイル型の直流電流計を使っています。コイルに電流が流れ生じる磁力が永久磁石に働く力を、利用しているのです。ですから、過剰な電流が順方向や逆方向に流れたとすれば、可動範囲を超え最悪はコイルが焼き切れることもあります。もしも、測定する値が不明なときには、測定レンジを最大に設定して測り、徐々に適切な測定レンジに切り替えて測定します。

■一方、デジタルテスターの御法度は、オートレンジですので最大定格を超える入力をすることです。直流の場合に極性を逆に測定しても、マイナス表示となるだけですので問題ありません。しかし、できるだけ正しい極性で測定することを心がけてください。

■御法度を含むやってはいけないことが、テスター取扱説明書の「安全使用のための警告文」に記載されています。一度目を通しておくことをお勧めします。CX506aとPC710の取扱説明書から主な項目を抜粋し補足しておきます。

1. 各ファンクションで定められた最大定格入力値を超える電圧、電流入力は行わないでください。
2. 測定前に必ずファンクションやレンジ、および測定端子の確認を行ってください。
3. 測定中は他のファンクションやレンジへ切り換えや、テストリードプラグを他の測定端子へ差し換えないでください。
4. テスター本体や手が水などで濡れた状態での使用はしないでください。
5. テスター本体やテストリードに損傷がある場合は使用しないでください。
6. ヒューズは指定された形状、定格のものを使用してください。指定以外のヒューズの使用やヒューズホルダーを短絡しての使用はしないでください。
7. 交流実効値33Vrms（最大値46.7Vpeak） または直流70V以上の電圧を扱う場合は、触れると感電の恐れがあり人体に危険なため注意してください。
8. 最大過負荷入力値を超える恐れがあるため、誘起電圧やサージ電圧が発生する（モーター等）ラインの測定は、行わないでください。
9. 本体ケースや内蔵電池蓋を開放した状態で使用しないでください。
10. 内蔵電池およびヒューズを交換するときは、テスター本体からテストリードを外してください。
11. 内蔵電池およびヒューズ交換を除くテスター本体内の修理・改造は行わないでください。
12. テスト棒は指定タイプのものを使用してください。
13. 測定中はテストプローブのつばより、テストピン側を持たないでください。
14. テスト棒は最初に接地側（黒）を接続し、そのあと通電側（赤）を接続してください。切り離すときは、最初に通電側から離してください。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日（第1版第2刷）

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』（13-1405 2040 2040）

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』（04-1405 5008 6010）

『テスターの基礎講座』の目次