工具の通販モノタロウ テスターの基礎講座 テスター各部の名称と役割

テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第2章 テスターの使い方

2-1 テスター各部の名称と役割

■スマートフォンなどは、説明書を読まなくとも操作ができます。それは、スマートフォンで何をするのかが、解っているからできることです。たとえば、スマートフォンでメールするためにはメーラー、ネット(Web)するためにブラウザー、SNSなどには専用のアプリケーションを起動して、ほぼ統一されているタッチパネル操作で、直感的に使っているのではないでしょうか。ただし、WiFiの設定など知識が必要なものもあります。さて、テスターも何のために抵抗・電圧・電流を測定するのか解っていれば、直感的に操作ができるはずです。そこで、使う立場で何のために何を測定するのかを明らかにしてから、その測定に必要な各部の名称と役割を説明します。少しでも、テスターの理解につながればと思います。

■テスターは何かを測定するのですから、測定値を表示する部分(メーター)、測定モードを選択する部分(ファンクションスイッチ)、測定信号を入力する部分(テスト棒)から構成されています。スマートフォンで言えば、測定値表示は液晶パネル、測定モード選択はアプリケーションの選択、測定信号入力はマイクやカメラになります。

テスター各部の名称と役割

■たとえば、スマートフォンのヘッドホンから音が聞こえないときや充電ができない場合には、ケーブルが断線していることが考えられます。もちろん、スマートフォンに異常がある可能性もありますが、スピーカーから音が聞こえれば、また他のケーブルで充電ができるのであれば、原因はケーブルにあることになります。このような場合には、ケーブルが断線していないかを確認します。テスターの中央にあるロータリースイッチが、ファンクションスイッチです。抵抗・電圧・電流などの測定モードを選択することができます。また、同じ測定モード内で測定レンジの切り替えを行います。このファンクションスイッチを、抵抗測定モードに切り替えて、赤と黒のテスト棒で導通を検査します。メーターに測定した抵抗値が表示され、導通すると約0Ω(ケーブルにも抵抗あり)、断線していると無限大(∞)Ω(デジタル表示では「0.L」)となります。ところで、「1-4 アナログテスター」の抵抗測定で説明したように、テスト棒同士を接続すると0Ωのはずです。しかし、電流計の内部抵抗や測定レンジ切り替えの分流器などにより、バラツキが発生し0Ωになりません。そこで、アナログメーターの右下にあるツマミがゼロオーム(0Ω)調整器です。抵抗測定レンジを切り替える度に、バラツキを解消し0Ωにする役割があります。この調整器は、デジタルテスターにはありません。また、デジタルテスターには、導通を音で検査する導通ブザー検査モードを備えた機種もあります。

■次に、マウスのカーソルが動かなくなったときやLED懐中電灯が点灯しない場合には、電池が消耗していることが考えられます。そのために、ファンクションスイッチを直流電圧測定モードに切り替えて、電池の電圧測定を行います。このとき、アナログテスターでは、ファンクションスイッチで適切な測定レンジを選択します。一方、デジタルテスターでは、ファンクションスイッチの上にあるファンクションボタンで、小数点の位置を変更したり、値を保持(ホールド)することができます。また、最大値や最小値、平均値まで表示できる機種もあります。

■最後に、家庭のコンセントやテーブルタップに交流電源が来ていることを確認するには、ファンクションスイッチを交流電圧測定モードに切り替えて、電圧測定を行います。また、「4-7 一石低周波増幅回路のチェック」で解説しますが、設計通りに動作しているかを確認するために、直流電流を測定します。そのために、ファンクションスイッチを直流電流測定モードに切り替えて、電流測定を行います。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

目次をもっと見る