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テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第2章 テスターの使い方

2-8 デジタル向きの使い方

■デジタルテスターで測定を行う場合に、アナログテスターようなウォーミングアップ(零位調整やゼロオーム調整)は必要ありません。また、レンジはほぼ自動で判断され単位も自動表示されます。そのため、安定した表示になるまで少し待ってから値を読み取る必要があります。しかし、レンジを誤って設定してしまい、アナログテスターのようにメーターが振り切れるというようなこともありません。テスト棒のプラスとマイナスを逆にしても、表示部に-(マイナス)マークが表示され、故障することはありません。それが、初心者向きと言われる理由の一つです。

■デジタルテスターの測定できる範囲も、説明書に仕様として記載されています。アナログテスターと同じ重要な三つを説明したいと思います。その一つはもちろん内部抵抗です。また、二つ目が交流を測定するときの周波数特性です。そして、最後の一つがテスト棒間の電圧と極性です。これら三つが、アナログテスターとどのように違うのかを知ることが、デジタルテスターを使いこなすために理解しておきたい内容です。

デジタル向きの使い方

■「1-5 デジタルテスターの仕組みと構造」でも説明しましたが、デジタルテスターはデジタル直流電圧計です。しかし、アナログテスター同様、電流や抵抗などはそのままデジタル直流電圧計に接続することができないため、入力する情報をすべて直流電圧に変換しています。そして、直流電圧をアナログ/デジタル変換(A/D変換)しデジタル値にします。また、デジタルテスターにも内部抵抗があり、入力抵抗10MΩ~100MΩなどの記載があります。たとえば、内部抵抗10MΩのデジタルテスターで、電源電圧E = 12[V]、抵抗器R1 = R2 = 10[kΩ]の回路を、12Vレンジで測定します。計算では抵抗器による分圧ですので、V = E×R2 / (R1 + R2) = 12[V]×10[kΩ] / (10[kΩ] + 10[kΩ]) = 6.0[V]となります。また、R2とRiが並列接続された合成抵抗値での分圧となりますが、合成抵抗値はR2i = (R2×Ri) / (R2 + Ri) = (10[kΩ]×10[MΩ]) / (10[kΩ] + 10[MΩ]) = 10[kΩ]ですから、分圧された電圧はV = E×R2i / (R1 + R2i) = 12[V]×10[kΩ] / (10[kΩ] + 10[kΩ]) = 6.0[V]となります。もちろん、実測でも6.0Vとなります。デジタルテスターの内部抵抗は、通常測定する回路の抵抗値より、十分に高いので無視することができます。このように、内部抵抗が測定する回路に与える影響を、特に考慮しなくとも正しく測定できます。そのことが、初心者向きと言われる理由でもあります。参考までに、sanwaのデジタルテスターPC710の仕様では、入力抵抗は10MΩです。

■一般的なデジタルテスターのACVレンジ周波数特性は、40Hz~500Hzの帯域でアナログテスターよりかなり狭くなっています。グラフは、PCで利用できる高機能なファンクション・ジェネレーター(WaveGene)を、使用して測定した結果です。当然ですが、アナログテスターCX506aは、miniDDSでの測定結とほぼ同じ傾向を示しています。さて、PC710のmVレンジは、周波数の低い方は40Hzからほぼフラットになります。一方、周波数の高い方ですが、10kHzで少し上がりますがそこから下がってきます。特性としては、アナログテスターと非常に良く似ています。PC710の仕様では、交流電圧測定モードの周波数範囲は、レンジや確度により異なりますが40Hzから20kHzとなっています。ほぼ仕様どおりですが、測定するレンジや確度には注意が必要です。

デジタル向きの使い方

■最後は、抵抗測定モードのときのテスト棒間の電圧と極性です。さて、「2-7 アナログ向きの使い方」とは反対に、デジタルテスターを抵抗測定モードにし、アナログテスターを直流電圧測定モードにします。テスト棒の赤と赤、黒と黒を接続します。すると、アナログテスターには、デジタルテスターの抵抗測定モードの電圧が表示されます。また、デジタルテスターには、アナログテスターの内部抵抗が表示されます。そして、電圧は+(プラス)表示になります。これで、デジタルテスターの抵抗測定モードでの極性は、測定端子の記載と同じであることがわかります。PC710の仕様では、抵抗測定モードの開放電圧は1.2Vです。ただし、60.00MΩレンジでは1.0Vと記載されています。1.2Vでは、LEDの順方向電圧以下ですので、発光テストは向かないと言えます。順方向電圧については「3-9 ダイオードの測定」で解説いたします。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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