テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 テスターの活用法

4-4 USB機器のチェック

■USBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の略称で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つです。パソコン本体とキーボード、マウス、デジタルカメラ、プリンター、スキャナー、メモリー、DVDなどを接続するインターフェイスとして使われています。USB以前はプリンター、モデム、マウス、キーボードなど多数の専用ポートが使用されていました。また、パソコンの電源をONからOFFまで、接続したままにしておかなければならないという制約もありました。それらの多数の規格を統一して、一つのポートで利用できるようにしたのが、USBという規格です。また、パソコン本体の電源がONでもケーブルを抜き挿しできるホットプラグ(Hot Plug)、機器の動作に必要な電源をパソコンから得られるバスパワード(Bus Powered)、さらに機器を接続したときにハードウェアとファームウェア、ドライバーとOSおよびアプリケーションが連携し、機器の組込みと設定を自動的に行うプラグアンドプレイ (Plug and Play)の機能があります。また、USBハブを介して多数の機器を接続できるなどの利点もあります。

■SCSIやシリアルポートなどを全部取り払ってUSBだけにした、衝撃的な初代iMacから急激に広まったインターフェイスです。1995年に、インテルやマイクロソフトなどが主体となって、レガシーポートと呼ばれるシリアルポートやパラレルポートの後継として開発されました。今では、初心者の方にも使いやすいデバイスとして、ほぼすべてのパソコンに搭載されています。基本的には信号ケーブルですが、接続機器の駆動用電源(5V)を供給するバスパワードにも対応しています。ただし、USBは規格により取り出せる電源容量が決まっているので注意が必要です。

●USBインターフェイス規格

規格名 仕様発行年月 最大データ転送速度 電流 電圧 電力
USB 1.0 1996年1月 12Mbit/s 500mA 5V 2.5W
USB 1.1 1998年9月
USB 2.0 2000年4月 480Mbit/s
USB 3.0 2008年11月 5Gbit/s (Gen 1) 900mA 4.5W
USB 3.1 2013年7月 10Gbit/s (Gen 2)
USB 3.2 2017年9月 20Gbit/s (Gen 2×2)


■しかし、これまで500mA (USB 1.X、USB 2.0)や900mA (USB 3.X)の電源供給が、2007年3月のUSBバッテリ充電仕様(USB Battery Charging R1.0)や2014年8月のType-Cコネクター登場とともに改訂されたUSB電源供給仕様(USB Power Delivery R2.0 V1.0)により劇的に変わります。USBバッテリ充電仕様は2010年12月にR1.2となり、USB電源供給仕様は2017年1月にR3.0 V1.1が発行されています。また、USBケーブルおよびコネクターの仕様(USB Type-C)も2017年7月にR1.3となりました。このUSB Type-Cの利用が規定されるとともに「パワールール」が導入され、USB電源供給仕様が大きく変わったと言えます。

●USB電源供給規格

規格 仕様発行年月 電流 電圧 電力
USB 1.1 1998年9月 500mA 5V 2.5W
USB 2.0 2000年4月
USB 3.2 2017年9月 900mA 5V 4.5W
USB Battery Charging R1.2 2010年12月 1.5A 5V 7.5W
USB Type-C R1.3 USB Type-C Current@1.5A 2017年7月 1.5A 5V 7.5W
USB Type-C Current@3A 3A 5V 15W
USB Power Delivery R3.0 V1.1 2017年1月 3A 5V 15W
3A 9V 27W
3A 15V 45W
5A 20V 100W


USB機器のチェック

■USBコネクターの形状は、「(Standard)USB」/「Mini USB」/「Micro USB」の大きく3種類あり、さらに「Type-A」/「Type-B」/「Type-C」と分かれています。また、各々にプラグ(オス)とレセプタプル(メス)があります。ところで、AやBという分類ですが、Aは本体側でBが周辺機器側になるように区別されています。また、iOS端末用のライトニング(Lightning)コネクターが、リバーシブルコネクターとして有名ですが、よく似たType-Cコネクターが2014年に登場しています。USBケーブルの導通検査は、該当するピンアサイン毎に行います。検査方法の詳細は、「3-1 導通の検査」を参照してください。また、USBの電源供給をチェックするには、「2-5 電圧の測り方」を参照してください。たとえば、(Standard)USBのときには、1番ピン(+)と4番ピン(-)間を測定します。また、Mini USBやMicro USBのときには、1番ピン(+)と5番ピン(-)間を測定します。

●USBコネクターの種類

コネクター USB2.0 USB3.0 USB3.1 備考
Type-A 2.0と3.Xでは樹脂色異なる
Type-B 2.0と3.Xでは形状異なる
Mini Type-A      
Mini Type-B      
Mini Type-AB      
Micro Type-A      
Micro Type-B 2.0と3.Xでは形状異なる
Micro Type-AB      
Type-C  


【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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