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テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 テスターの活用法

4-2 電池ボックスのチェック

■電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。そして、使用する電池の形状等により様々な電池ボックスが存在します。さて、電池ボックスとして独立している場合には、電池が入る部分のプラスとマイナスの端子を順番に導通検査していきます。電圧測定は電池を挿入して、「2-5 電圧の測り方」のようにプラスとマイナスのリード線にテスト棒を接続します。しかし、ケースと一体化している電池ボックスでは、ケースを分解しないと断線や電圧測定ができない場合もあります。ただし、メーカー保証を受けられなくなる可能性がありますので、自己責任で行ってください。

■電子工作でよく利用する電池ボックスでは、電池ボックスとケーブルのハンダ付け部分が、断線しやすい箇所です。それ以外にも、DCモーターケーブルのように、モーターの電源端子とケーブルのハンダ付け部分も断線しやすい箇所となります。また、トランジスターラジオなどのキットを、組み立てるときの断線しやすい箇所は、基板とスピーカーケーブル、電池ボックスと接続ケーブルのハンダ付け部分となります。たとえば、キットの基板をケースに納める前には動作していても、ケースに実装すると聞こえなくなることがあります。原因は、基板とスピーカーケーブルのハンダ付け部分の断線などです。動作を確認するときやケースに実装するときに、ハンダ付け部分に負担がかかり断線することが多く、銅線とハンダの硬さが異なるためその境目から折れてしまいます。

電池ボックスのチェック

■9V電池または006P型と呼ばれている電池では、スナップホルダーが使われています。このホルダーのスナップ形状は、電池とホルダーでは極性が逆になっています。電池のプラス極を受けるのがホルダーのマイナス極形状で、マイナスを受けるのがホルダーのプラス極形状です。すなわち、スナップホルダーの導通検査では、ホルダーのマイナス極形状端子と赤のリード線、プラス極形状端子と黒のリード線を検査します。ところで、006P型電池は、ソニーが1957年自社のラジオ(TR-63)用に開発依頼した電池で、1.5Vの電池を6個組み合わせた積層電池です。また、006P型とは電池形状を表し、形式番号は別にあります。

■筆者が経験した、断線の落とし穴です。原因がわかってしまえば「なーんだ」と当然なのですが、それまでにはとても時間がかかりました。製作した基板の電源電圧を測定しているとき、ケース実装直前まで正常な電圧の3.3Vでしたが、ケースに組み込むと0Vになります。いつものように、基板とケーブルのハンダ付け部分に断線が無いかを確認し、再度電圧を測定しても0V、定電圧用の三端子レギュレーターを交換しても0Vです。原因不明の状態がしばらく続き、あるとき別のテスターで測定すると3.3Vあり正常なのです。しかし、0Vとなったテスターで測定すると、やはり0Vです。さらに、テスター棒同士を接触させた抵抗値は、「0.L」となり無限大です。正常ならば0Ωのはずです。よく観るとテスター棒とケーブルの接続部分の被覆が、白っぽくかつ柔らかくブラブラしています。明らかに、内部の銅線が切れてしまい、被服だけでつながっている状態です。軽くケーブルを引っ張ると切れてしまいました。テスターのケーブルも、やはりケーブルですので断線します。落とし穴にはまらないように、皆さんもご注意ください。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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