テスターの基礎講座
4-8 さらにテスターを活用する方法(LEDチェッカー)
■LEDは色々なところに利用されていて、もはや生活には無くてはならない電子部品のひとつです。その種類も豊富で、発光色は赤・緑・青から白・黄・桃や電球色などがあります。また、輝度や指向角により、高輝度型・超高輝度型や拡散型などもあります。さらに、ICを組み込んだ自動点滅やミラーボールのように七色変化するものまでもあります。一方、ネットで袋売りされている規格不明のLEDや規格自体を忘れてしまったときには、どうすればいいのでしょうか。
■LEDは電流制御素子で、電流により輝度が変化します。ですから、電流を規格内で制御していれば、電圧が3V、9Vや12Vでも、もしくは100Vでも動作します。ただし、電流制御回路や前述のようなICが組み込まれたLEDモジュールは、電圧範囲が指定されています。ところで、輝度を制御している電流は順方向電流(IF)と呼ばれ、普通のLEDで5~10mA、高輝度タイプで10~20mA程度です。また、最大定格は30mA程度のLEDが多いので、これを超えないよう注意します。このときのLED両端にかかる電圧が順方向電圧(VF)と呼ばれ、赤/緑等のLEDで1.6~1.8V、青/白/青緑等のLEDは3.2~3.4V程度です。順方向電流と順方向電圧を知ることは、LEDの規格を知ることですのでとても重要です。適切な輝度になる電流を測り、そのときのLED端子間電圧を測定すれば順方向電圧がわかります。
■それでは、LEDの順方向電流と順方向電圧を測定するために「可変型定電流電源」を製作し、さらにテスターを活用したいと思います。可変型定電流電源には、定番の可変型三端子レギュレーターICである「LM317T」を使用します。LM317は、出力電圧1.2~37Vで出力電流1.5Aを供給できる正電圧可変型三端子レギュレーターICです。可変型定電圧電源としての利用が多いと思いますが、今回は、OUT(1番ピン)とADJ(2番ピン)の間に可変抵抗器(1kΩC)を入れて、可変型定電流電源として使用します。回路図にあるように、三端子レギュレーターICの3番ピン(IN)に電源のプラスを、1番ピン(OUT)と2番ピン(ADJ)の間に可変抵抗器を接続すると、1番ピン(OUT)に一定の電流が流れます。電流は可変抵抗器で、1.2mAから50mA位まで設定することができます。入力電圧は、(LEDの直列接続本数)×(順方向電圧)で、必要な電圧を計算してください。たとえば、赤のLED1個では1×1.8V以上、青のLED2個では2×3.4V以上の直流電圧が必要となります。入手しやすいACアダプター5Vから24V位で、使用するのが良いと思います。ただし、LEDの逆耐圧は5V前後ですので、逆接続にはくれぐれもご注意ください。また、電源ONのLEDは、2.7mAの定電流ダイオードにより点灯させています。
■LEDチェッカーは、プチブレッドボードやテスターと接続し次のように使用します。
●二台のテスターがあるとき
1)LEDチェッカーのプラス(赤)を、テスターのプラス(赤)に接続します。
2)テスターのマイナス(黒)を、プチブレッドボード上でLEDのアノード(長いリード)に接続します。
3)カソード(短いリード)を、プチブレッドボード上からLEDチェッカーのマイナス(黒)に接続します。
4)可変抵抗器は反時計回り一杯に、設定しておきます。
5)テスターは電流測定レンジに設定します。
6)LEDチェッカーの電源をONし、適切な輝度になるまで、可変抵抗器を時計回りに少しずつ回していき、電流を測ります。高輝度LEDは約3mAで十分明るく点灯します。
7)もう一台のテスターで、LED端子間の電圧を測ります。
●テスターが一台しかないとき
7)LEDチェッカーの可変抵抗器位置をそのままにして、電源をOFFします。
8)テスターを外し、LEDチェッカーとLEDを接続します。
9)LEDチェッカーの電源をONし、電圧測定レンジにしたテスターで測定します。
■好みの輝きを見つけたら、使用電圧のときに実装する抵抗値を、オームの法則から計算することができます。電流の値(Iout)、LED両端の電圧(VF)、電源電圧(V)とすれば、V = IRより、I = V / Rですので、R =(V - VF)/ Iout[Ω]となります。たとえば、電流の値(Iout)が5mA、LED両端の電圧(VF)が1.8Vで、使用する電圧が3Vの場合には、R =(3 - 1.8)[V] / 5[mA] = 240[Ω]です。また、消費電力(P)は、P = VI = IRI = R(I^2) = 240[Ω]×(5[mA]^2) = 6[mW]となります。チップ抵抗0603(50mW)でも目安である4倍の電力容量を満たしていますので問題ありません。このように、電源電圧が固定ならば、電流制限の抵抗器を接続しLEDを点灯させることができます。また、電源電圧が可変のときには、定電流ダイオードを利用します。
【参考文献】
内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)
三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)
三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)
三和電気計器『DCL31DR デジタルクランプメータ取扱説明書』(01-1507 2040 6011)
『テスターの基礎講座』の目次
第1章 テスターの概要
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1-1テスターとは何をするもの?多くの人は、テスターと言われると、店頭などで化粧品の特長や使用性を体感するためのお試し用店頭見本や、コンピューターのソフトウェアなどを動作検証する人を思い浮かべるのではないでしょうか。
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1-2テスターで何がわかるの?テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。いったい、それらを測定して、電気・電子回路の何がわかるのでしょうか。
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1-3テスターの種類テスターには、どのようなものがあり、何が測れるのでしょうか。まず、表示方式の違いでは、アナログメーターで表示するアナログテスターと液晶画面(LCD)で表示するデジタルテスターがあります。
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1-4アナログテスターの仕組みと構造アナログテスターは、測定値を「アナログメーター」で表示します。じつは、このアナログメーターが「直流電流計」そのものなのです。
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1-5デジタルテスターの仕組みと構造デジタルテスターは、測定値を「液晶ディスプレイ(LCD)」などに表示します。アナログテスターは「直流電流計」でしたが、デジタルテスターは「デジタル直流電圧計」なのです。
第2章 テスターの使い方
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2-1テスター各部の名称と役割スマートフォンなどは、説明書を読まなくとも操作ができます。それは、スマートフォンで何をするのかが、解っているからできることです。
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2-2テスト棒の使い方アナログテスターもデジタルテスターも、赤と黒のテスト棒をテスター本体の測定端子に差し込み使用します。
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2-3テスターの測定値の読み方アナログテスターでは、測定の前に零位調整とゼロオーム調整が必要なことは理解いただけたかと思います。
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2-4抵抗(導通)の測り方アナログテスターで導通検査や抵抗測定を行う場合には、スポーツと同じようにウォーミングアップ(準備体操)が必要となります。
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2-5電圧の測り方アナログテスターで電圧測定を行う場合には、前節の導通検査や抵抗測定とは異なりウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
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2-6電流の測り方アナログテスターで電流測定を行う場合には、前節の電圧測定と同様ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
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2-7アナログ向きの使い方デジタルテスターは、測定モードによりテスト棒を当てたときに数字が細かく変化します。そのため、安定した表示に定まるまで少し時間がかかります。
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2-8デジタル向きの使い方デジタルテスターで測定を行う場合に、アナログテスターようなウォーミングアップ(零位調整やゼロオーム調整)は必要ありません。
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2-9機種によって違う測定機能これまでは、テスターの基本機能である電圧・電流・抵抗の測定について、テスターの仕組みと構造を交えて解説してきました。
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2-10テスターでやってはいけないことアナログテスターとデジタルテスターに共通する最大の御法度は、ファンクションを電流測定モードにして電圧を測ることです。
第3章 テスターの測定方法
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3-1導通の測定デジタルテスターには、導通検査ファンクションを持っているものが多くあります。
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3-2人体の抵抗測定人体の抵抗を測ってみたことはありますか。
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3-3電池の電圧測定「1-2 テスターで何がわかるの?」では、電池が消耗していると、豆電球が明るく点灯しないことを説明しました。
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3-4家庭用電源の電圧測定家庭用コンセントに供給されている電気は、交流電圧100Vの電源です。
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3-5カーバッテリーの電圧測定電気自動車やハイブリッドカーなど、車の進化とともにカーバッテリーも大きく進化を遂げています。バッテリーはエンジンの始動など、ランプ系(ヘッドライト、ブレーキランプなど)、電装系(パワーウインドウ、ワイパー、カーオーディオやカーナビなど)に電力供給をしています。
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3-6抵抗器の測定電子部品である抵抗器には色々な種類があります。
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3-7コンデンサーの測定日本ではコンデンサー、欧米ではキャパシターと呼ばれている電気を充放電する電子部品で、色々な種類があります。
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3-8コイル・トランスの測定コイルはインダクターとも呼ばれ、線材をらせん状にクルクルと巻いた構造をしています。
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3-9ダイオードの測定ダイオードを測定するためには、その特性を知っておく必要があります。
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3-10バイポーラトランジスターの測定最近の電子機器には、トランジスター等を内部に形成したICなどのモジュールが多く搭載され、3本足のトランジスターは見かけなくなりました。
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3-11電界効果トランジスターの測定「3-10 バイポーラトランジスターの測定」では、動作に関わるキャリアが2種類あるバイポーラトランジスターをご紹介しました。
第4章 テスターの活用法
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4-1ケーブルの断線チェックケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。
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4-2電池ボックスのチェック電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。
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4-3ACアダプターのチェックACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。
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4-4USB機器のチェックUSBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の略称で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つです。
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4-5スピーカーとイヤホンのチェックスマートフォンやパソコン、テレビやオーディオ機器の音の出口として、スピーカーやヘッドフォン、イヤホンなどがあります。ラジオを聞くにも欠かせない、音の出口となる部品の一つです。
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4-6オーディオアンプのチェック電子工作には欠かせない、あると便利なのがオーディオアンプです。
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4-7一石低周波増幅回路のチェックラジオは方式にもよりますが、同調・高周波増幅・中間周波増幅・検波・低周波増幅・周波数変換・局部発振など、高周波から低周波までの多くの回路から構成されており、チェックするにはそれなりの知識と経験が必要です。
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4-8さらにテスターを活用する方法(LEDチェッカー)LEDは色々なところに利用されていて、もはや生活には無くてはならない電子部品のひとつです。
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4-9さらにテスターを活用する方法(磁気チェッカー)磁石は身近にあり多くの電子機器にも利用されています。
第5章 使用上の注意点、トラブル対応
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5-1初心者が扱うと危険な測定大切なテスターを壊す最大の原因は、直流電流測定モードで電圧を測ってしまうトラブルです。
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5-2テスターの故障確認方法テスターも電子機器ですので、使用していると「測定値がおかしい」、「指針が振れない」、「電源が入らない」などの故障をすることが当然あります。
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5-3テスターとオームの法則「オームの法則」とは、電圧(V)[V] = 電流(I)[A]×抵抗(R)[Ω]の関係式です。
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5-4テスターの保守方法テスターは測定器ですので、安全と確度の維持のために1年に1回以上は、保守と校正の点検を行うことをお勧めします。
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5-5テスターの管理方法テスターは、測定に使っているとパネルやケースがどうしても汚れてきます。その汚れを落とそうと、シンナーやアルコール等で拭くことはしないでください。