テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第3章 テスターの測定方法

3-9 ダイオードの測定

■ダイオードを測定するためには、その特性を知っておく必要があります。ダイオードは、アノード(陽極)とカソード(陰極)の二つの端子を持ち、電圧をある一定方向に印加したときだけに、電流を一方向に流す素子です。すなわち、アノードからカソードへは電流を流しますが、カソードからアノードへはほとんど流しません。これらは整流作用と呼ばれていて、最初は二極真空管(整流管)でしたが、後に半導体ダイオードが開発されます。真空管では、電極間の印加電圧極性により、カソードからの熱電子がアノードに到達するかが決まり、整流効果を得ることができます。また、半導体ダイオードでは、p型とn型の半導体が接合されたpn接合などが示す整流作用が用いられます。pn接合型ダイオードでは、p型側がアノード、n型側がカソードとなります。ダイオードには、細い帯が印刷されています。その帯側がカソードで、反対側がアノードです。電流が流れる方向の電圧のかけ方を、順方向と呼び一定電流(順方向電流)流すための電圧を順方向電圧と言います。また、電流が流れない電圧のかけ方を、逆方向と呼びその最大電圧を逆方向電圧(逆耐圧)と言います。

■導体の材料や構造により、様々な機能や特性を持つダイオードがあります。一般整流用ダイオード(シリコンダイオード)は、電気を一方向にだけ流し、電源回路や保護回路などに使用します。検波用ダイオード (ゲルマニウムダイオード)は、無線信号から音声信号を取り出し、ラジオなどの無線機器などに使用します。定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は、逆方向に電圧をかけると、一定の電圧で電気が流れる「ツェナー現象」を利用し、電源回路やノイズ源として使用します。フォトダイオードは、光を感知すると電流が変化し、センサーや光通信などに使用します。定電流ダイオードは、電圧が変化しても電流を一定に保ち、LEDを点灯する定電流回路などに使用します。また、最も身近なLED(Light Emitting Diode)もダイオードの仲間です。

ダイオードの測定

■テスターによりダイオードを検査できる機種もあります。デジタルテスターでは、ファンクションスイッチでダイオード検査モードを選択します。ただし、ブザーで導通検査をする導通チェックモード(「2-4 抵抗(導通)の測り方」参照)などの他のファンクションと混在モードになっていることが多く、さらにファンクションボタンでダイオード検査モードを選択します。そして、ダイオードのカソードに黒のテストピンを、アノードに赤のテストピンを当て順方向電圧を測定します。一般的にゲルマニウムダイオードやショットキーバリアーダイオードでは0.1Vから0.6V、シリコンダイオードでは0.4Vから0.9Vの範囲にあります。これよりも高い値の場合は、正常でない可能性が考えられます。また、値がゼロや極端に低いとにきは短絡不良、「0.L」や「0.F」の場合には断線不良と考えられます。次に、テストピンを入れ替えて、逆方向電圧を測定します。しかし、ダイオード検査モードの端子間開放電圧はDC約3V(PC710ではDC3.5V以下)で、ダイオードの逆方向電圧は数十Vと高いため電流が流れません。すなわち、電流が流れないことを確認します。「0.L」や「0.F」の場合にはダイオードは正常と考えられます。しかし、他の値では短絡しているなどの不良の可能性が考えられます。

■アナログテスターでは、ダイオード検査モードがありませんので、抵抗測定モードを使います。また、アナログテスターでは、抵抗測定モードと抵抗レンジがセットになっていますので、アナログメーターの針がよく振れる最低レンジを選びます。テスターの種類やレンジにより異なることがありますが、抵抗測定モードの端子間開放電圧は、DC約3V(CX506aではDC3V、ただし10kレンジのみDC12V)です。そして、「2-7 アナログ向きの使い方」で解説したように、アナログテスターの抵抗測定モードでの極性が、測定端子の記載と逆になっています。赤のテストピンにはマイナス、黒のテストピンにはプラスの電圧がかかっています。すなわち、アナログテスターでダイオードを検査する場合は、デジタルテスターとは反対にテストピンを当てます。順方向では導通があり、逆方向では∞(無限大)となり電流が流れないことを確認します。

■ところで、LEDの測定ですが、デジタルテスターではダイオード検査モードでLEDを検査することができます。LEDのカソード(短いリード)に黒のテストピンを、アノード(長いリード)に赤のテストピンを当て順方向電圧を測定します。赤色や緑色LEDは、順方向電圧(約1.8V)を表示しLEDが点灯します。しかし、青色や白色LEDの順方向電圧は約3.6Vありますので、点灯はしますが表示は「0.L」や「0.F」となります。「4-10 さらにテスターを活用する方法」では、青色や白色LEDの順方向電圧を測定する方法について解説します。一方、アナログテスターでは、抵抗測定モードで点灯検査を行います。テスターの赤をカソードへ、黒をアノードへ接続して点灯を確認します。しかし、前述のように抵抗測定モードの端子間開放電圧は、テスターにより異なります。たとえば、端子間開放電圧が2.0Vのときには、青色LEDの順方向電圧より低いため点灯しません。テスターの説明書には、端子間開放電圧の記載があると思いますが、「2-7 アナログ向きの使い方」で説明したように、抵抗測定モードのときのテスト棒間の電圧と極性を確認しておくことをお勧めします。また、デジタルテスターPC710では、抵抗測定モードの端子間開放電圧はDC1.2V以下ですので、LEDの点灯検査には適しません。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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