テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第3章 テスターの測定方法

3-2 人体の抵抗測定

■人体の抵抗を測ってみたことはありますか。人体の抵抗を測定するには、テスターのファンクションを抵抗測定モードにして測定します。デジタルテスターでは、ファンクションスイッチで抵抗測定モードを選択します。また、アナログテスターでは、抵抗測定モードと抵抗レンジがセットになっていますので、「Ω×1kレンジ」や「Ω×10kレンジ」を選びます。つぎに、テストピンの先端を、右手と左手の指先で摘まみ数値を読みます。おそらく、数百Ωから数M(メガ)Ωの値を示しているのではないでしょうか。手を洗った直後の指先が湿っているときには、指先が乾いているときよりも小さな値となります。

■人体は絶縁体に近いのですが、体内には水分が含まれていますので電流が流れます。すなわち、電流が流れるいうことは、感電に注意する必要があります。それでは、テスターで抵抗を測るときには、テスト棒に数Vの電圧がかかっていますが、なぜ感電しないのでしょうか。一般的に、人が感じる最小感知電流は1mA程度で、痛みを覚えるのが5mA程度と言われています。たとえば、1.5Vの電池の場合、1mA流すにはR = E / I = 1.5[V] / 1[mA] = 1.5[kΩ]となり、人体の抵抗が1.5kΩ以下なら感じることになります。しかし、乾燥している指先の抵抗値は10kΩ以上ありますので、感電することはありません。人により若干異なりますが、一般的な電流の大きさと感電による症状です。

1mA 感じる程度
5mA 痛みとして感じる
10mA 我慢できない
20mA 痙攣、動けない
50mA 非常に危険
100mA 致命的


人体の抵抗測定

■人体は電流が流れることがわかりましたので、抵抗を測るときにも注意が必要です。すなわち、抵抗器の抵抗値を測定するときに、指でテストピンをつまんでしまうと、人体の抵抗値によっては正しく測定できなくなります。指先から手、腕、胸部を電流が流れ、値を知りたい抵抗器に対して並列に人体の抵抗が接続されてしまいます。たとえば、抵抗器の抵抗を43kΩ、人体の抵抗を10kΩとすれば、R = 1 /(1 / 43[kΩ] + 1 / 10[kΩ])= (43×10)/(43+10)= 8.1[kΩ]となり、実際の値よりも小さくなってしまうことがわかります。抵抗器のリードにテストピンを当てるときには、テストピンを指でつままないようにしてください。

■人体に電流が流れることを応用した体脂肪率計は、微弱電流を流して人体の電気抵抗を測定しています。脂肪は水分を含まず電気を通さないため、脂肪量の違いによって体の電気抵抗が異なります。このことを利用して、性別・年齢・体重・身長に応じたデータを内蔵し、電気抵抗から体脂肪率を予測するプログラムが組み込まれ、体脂肪率を換算しています。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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