■電子工作には欠かせない、あると便利なのがオーディオアンプです。筆者お気に入りのオーディオアンプは、エレキットの「ベビー・アンプPS-3238」で、パワーアンプ専用IC「NJM2073D」を使用したパワーアンプキットです。電源電圧範囲が1.8V～15Vと広いうえ、消費電流が少ないので電池での使用にも最適です。また、基板上のジャンパー線接続により、本機1台でステレオとモノラル（BTL）のどちらでも使用できます。筆者は、電源と入出力端子にターミナルブロック、ステレオとモノラル（BTL）の切替にピンヘッダーとジャンパーピンを追加して、実験用のオーディオアンプとして活用しています。もちろん、ポータブルオーディオプレーヤーのスピーカーアンプや、機器組み込み用のアンプとしても利用できます。

■キットを製作する場合には、部品配置を間違えなければ動作するはずです。特に、極性がある素子の電解コンデンサーやダイオード、また、トランジスターやICの向きに注意が必要となります。エレキットの添付されている製作説明書やホームページに掲載されている資料は、とても親切でわかりやすいので必ず熟読してください。そして、特に注意が必要なことは電源電圧です。最大出力付近で使用するときには、接続する負荷（インピーダンス）により、最大電源電圧が決まります。その最大電源電圧以上を加えると、ICが破損することがありますので注意が必要です。それでは、どのようにオーディオアンプをチェックするのでしょうか。

■製品仕様を確認しておきます。

●製品仕様

●ステレオ動作

●モノラル（BTL）動作

■キットの仕様に基づき、ステレオとモノラル（BTL）動作の選択、負荷と電源電圧を決めます。たとえば、ステレオ動作で負荷8Ω電源電圧6Vとします。6Vの電源を基板のDC-IN端子に接続します。テスターを直流電圧測定モードに設定し行います。マイナス端子に黒のテスト棒、プラス端子に赤のテスト棒を当て電源電圧を測定します。もちろん約6Vとなります。次にICの電源電圧を検査します。4番ピンに黒のテスト棒、2番ピンに赤のテスト棒を当て電源電圧を測定します。前述の電源電圧と同じになればOKです。さらに、無入力信号時のIC出力電圧を検査します。マイナス端子に黒のテスト棒、1番ピンに赤のテスト棒を当て電圧を測定します。また、3番ピンにも赤のテスト棒を当て電圧を測定します。どちらも電源電圧の半分×90%位になればOKです。筆者の測定では、電源電圧が6.20Vで、出力電圧は2.79Vとなりました。この電源電圧と無入力信号時のIC出力電圧の関係は、モノラル（BTL）動作でも同じになります。他のキットでも、ICのデータシートを参考に同じようにチェックができると思います。ところで、ステレオミニジャックに、モノラルミニプラグを接続しないでください。ステレオミニジャックのリング（R）とスリーブ（GND）が短絡します。必ずモノラルステレオ変換アダプターを使うことを推奨します。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日（第1版第2刷）

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』（13-1405 2040 2040）

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』（04-1405 5008 6010）

MonotaRO「エレキット ベビー・アンプ」（2018年8月31日アクセス）

『テスターの基礎講座』の目次