テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第3章 テスターの測定方法

3-1 導通の測定

■デジタルテスターには、導通検査ファンクションを持っているものが多くあります。ファンクションを抵抗測定モードにし、ファンクションボタンでブザーマークを選んで、テストピン同士を接触させてブザーが鳴るのを確認してください。また、取扱説明書(sanwa PC710)には、抵抗値が20から300Ωでブザーが鳴ると記載されています。ビニール被覆線などは、配線が途中で断線していても被覆によりわからないことが多いので、導通を検査します。電線がつながっていれば、抵抗は0Ωに近いので、すぐにブザーが鳴ります。ところが、途中で線が切れていれば、抵抗値は無限大と考えられるのでブザーは鳴りません。

■一方、ほとんどのアナログテスターには導通検査ファンクションはなく、ブザーはついていません。しかし、「2-4 抵抗(導通)の測り方」でも少し説明しましたが、ファンクションを抵抗測定モードにして、抵抗値を測定することにより判断ができます。すなわち、メーターの指針が、左に振れ0Ωに近ければ導通有り、ほぼ振れず右の∞(無限大)Ωに近ければ断線と判断することができるのです。

導通の測定

■検査する箇所がたくさんあるときに、アナログメーターの指針を毎回見るのは効率が悪い作業です。そこで、電子ブザーと電池で簡易的な導通チェッカーを作っておくと、意外に便利ですのでお勧めです。電子ブザーは通販でも入手できますが、動作電圧に注意して購入してください。電池1個(1.5V)または電池2個(3.0V)で動作する電子ブザーが、安価で扱いやすいと思います。例えば、小学校の理科の実験でよく使われている「アーテック(学校教材・教育玩具)電子ブザー」は、動作電圧DC3Vで音量90dBです。一方、「ELPA(朝日電器)ミニブザー 1.5V」では、定格電圧DC1.5Vですが使用電圧範囲DC1.0から10V、音量70dB/0.2mとなっています。

■導通チェッカーのキットも販売されています。例えば、ワンダーキットの 「導通チェッカーキット TU-7GL」は、検査する回路にトランジスターやダイオードが含まれていても、カレントミラー回路(定電流回路)を応用して作られているため、それらに影響されることなく配線状態を確認できる導通チェッカーのキットです。テスターの導通検査機能や電子ブザーの簡易的な導通チェッカーでは、部品や電線単体での導通検査は問題ありません。しかし、基板上にICやトランジスター・ダイオードなどの部品が実装された状態での導通検査は、それらの部品の影響で半導通状態になったり、微妙な電圧を与え誤動作を起こしてしまい正常に測定することができないのです。また、電源電圧はDC9V(006P電池)で、導通検査結果は圧電ブザーの発振音が高低に変化し、大まかな抵抗値の大小も判別可能です。電子工作を始められる方にも、テスターとともにお勧めのキットです。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

MonotaRO「アーテック(学校教材・教育玩具)電子ブザー」(2017年6月29日アクセス)

MonotaRO「ELPA(朝日電器)ミニブザー 1.5V」(2017年6月29日アクセス)

MonotaRO「ワンダーキット 導通チェッカーキット TU-7GL」(2017年6月29日アクセス)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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