テスターの基礎講座
4-9 さらにテスターを活用する方法(磁気チェッカー)
■磁石は身近にあり多くの電子機器にも利用されています。棒磁石、方位磁石、モーターやスピーカー、スマートフォンのバイブ機能など、そこから発生している磁気も存在しています。ところが、磁気は直接見たり、触れたりすることができません。学校教材用棒磁石などは、S極が青でN極が赤に塗り分けられています。しかし、極性が判らない棒磁石のS極やN極を知るためには、どうしたらいいのでしょうか。簡単な方法は、極性が判っている棒磁石を利用することです。同極同士は退け合い(反発)し、異極同士は引き合う(吸引)現象から判断することができます。それでも、磁気の大きさまではわかりません。
■そこで登場するのが磁気センサーです。磁石や電流が発生する磁気の大きさ、向きを検知するセンサーのことであり、ホール素子や磁気抵抗素子など多くの種類があります。ホール素子は、電流と磁界の相互作用によって起電力を生み出し、磁束密度の極が反転すると出力電圧の符号も逆になります。一方、磁気抵抗素子は、磁界の存在によって抵抗素子の抵抗値が変化し、極が反転しても出力電圧の符号は変化しません。また、ホ-ル効果は、1879年Hallによって発見され、電流を流した物体に磁場をかけると電場が生じる現象です。
■それでは、磁石のS極やN極、磁束密度を測定するために、ガウスメーターやテスラメーターと呼ばれている「磁束密度計」を製作し、さらにテスターを活用したいと思います。磁気を検出するセンサーには、リニア出力のホール効果センサーICである「A1324LUA-T」を使用します。0G(ガウス)の出力電圧2.5Vを基準として、5mV/Gでリニアに磁束密度を測定することができます。回路図にあるように、ホール効果センサーICの1番ピン(VDD)に電源のプラス(5V)を、2番ピン(GND)にマイナスを加えると、3番ピン(VOUT)に磁束密度に比例した電圧を出力します。磁気が無い(0G)ときには、2.5Vとなります。直流電圧5Vの電源ですが、定番の三端子レギュレーター(78L05)やUSBからも5Vが供給されていますので利用することが可能です。
■測定方法ですが、電源をONすると静止出力電圧である約2.5V(2.435~2.575V)を表示します。棒型磁石などを、センサー正面から近づけ測定します。たとえば、S極を近づけると3.8Vと基準電圧2.5Vよりも大きくなります。N極を近づけると1.4Vと小さくなります。5mVが1Gですので、0.2Gが1mVとなります。基準電圧との差は3.8[V] - 2.5[V] = 1300[mV]、1300[mV]×0.2[G/mV] = 260[G]です。同様に、1.4[V] - 2.5[V] = -1100[mV]、1100[mV]×0.2[G/mV] = -220[G]です。また、「5-3 テスターとオームの法則」でも触れますが、テスラコイルで有名なクロアチア出身のニコラ・テスラの名前も、磁束密度の単位「テスラ[T]」に使われています。G(ガウス)とT(テスラ)の関係は、1[G] = 0.1[mT]となります。
【参考文献】
内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、215年11月20日(第1版第2刷)
三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)
三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)
三和電気計器『DCL31DR デジタルクランプメータ取扱説明書』(01-1507 2040 6011)
MonotaRO「アーテック(学校教材・教育玩具)棒フェライト磁石」(2019年2月11日アクセス)
『テスターの基礎講座』の目次
第1章 テスターの概要
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1-1テスターとは何をするもの?多くの人は、テスターと言われると、店頭などで化粧品の特長や使用性を体感するためのお試し用店頭見本や、コンピューターのソフトウェアなどを動作検証する人を思い浮かべるのではないでしょうか。
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1-2テスターで何がわかるの?テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。いったい、それらを測定して、電気・電子回路の何がわかるのでしょうか。
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1-3テスターの種類テスターには、どのようなものがあり、何が測れるのでしょうか。まず、表示方式の違いでは、アナログメーターで表示するアナログテスターと液晶画面(LCD)で表示するデジタルテスターがあります。
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1-4アナログテスターの仕組みと構造アナログテスターは、測定値を「アナログメーター」で表示します。じつは、このアナログメーターが「直流電流計」そのものなのです。
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1-5デジタルテスターの仕組みと構造デジタルテスターは、測定値を「液晶ディスプレイ(LCD)」などに表示します。アナログテスターは「直流電流計」でしたが、デジタルテスターは「デジタル直流電圧計」なのです。
第2章 テスターの使い方
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2-1テスター各部の名称と役割スマートフォンなどは、説明書を読まなくとも操作ができます。それは、スマートフォンで何をするのかが、解っているからできることです。
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2-2テスト棒の使い方アナログテスターもデジタルテスターも、赤と黒のテスト棒をテスター本体の測定端子に差し込み使用します。
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2-3テスターの測定値の読み方アナログテスターでは、測定の前に零位調整とゼロオーム調整が必要なことは理解いただけたかと思います。
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2-4抵抗(導通)の測り方アナログテスターで導通検査や抵抗測定を行う場合には、スポーツと同じようにウォーミングアップ(準備体操)が必要となります。
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2-5電圧の測り方アナログテスターで電圧測定を行う場合には、前節の導通検査や抵抗測定とは異なりウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
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2-6電流の測り方アナログテスターで電流測定を行う場合には、前節の電圧測定と同様ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
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2-7アナログ向きの使い方デジタルテスターは、測定モードによりテスト棒を当てたときに数字が細かく変化します。そのため、安定した表示に定まるまで少し時間がかかります。
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2-8デジタル向きの使い方デジタルテスターで測定を行う場合に、アナログテスターようなウォーミングアップ(零位調整やゼロオーム調整)は必要ありません。
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2-9機種によって違う測定機能これまでは、テスターの基本機能である電圧・電流・抵抗の測定について、テスターの仕組みと構造を交えて解説してきました。
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2-10テスターでやってはいけないことアナログテスターとデジタルテスターに共通する最大の御法度は、ファンクションを電流測定モードにして電圧を測ることです。
第3章 テスターの測定方法
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3-1導通の測定デジタルテスターには、導通検査ファンクションを持っているものが多くあります。
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3-2人体の抵抗測定人体の抵抗を測ってみたことはありますか。
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3-3電池の電圧測定「1-2 テスターで何がわかるの?」では、電池が消耗していると、豆電球が明るく点灯しないことを説明しました。
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3-4家庭用電源の電圧測定家庭用コンセントに供給されている電気は、交流電圧100Vの電源です。
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3-5カーバッテリーの電圧測定電気自動車やハイブリッドカーなど、車の進化とともにカーバッテリーも大きく進化を遂げています。バッテリーはエンジンの始動など、ランプ系(ヘッドライト、ブレーキランプなど)、電装系(パワーウインドウ、ワイパー、カーオーディオやカーナビなど)に電力供給をしています。
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3-6抵抗器の測定電子部品である抵抗器には色々な種類があります。
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3-7コンデンサーの測定日本ではコンデンサー、欧米ではキャパシターと呼ばれている電気を充放電する電子部品で、色々な種類があります。
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3-8コイル・トランスの測定コイルはインダクターとも呼ばれ、線材をらせん状にクルクルと巻いた構造をしています。
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3-9ダイオードの測定ダイオードを測定するためには、その特性を知っておく必要があります。
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3-10バイポーラトランジスターの測定最近の電子機器には、トランジスター等を内部に形成したICなどのモジュールが多く搭載され、3本足のトランジスターは見かけなくなりました。
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3-11電界効果トランジスターの測定「3-10 バイポーラトランジスターの測定」では、動作に関わるキャリアが2種類あるバイポーラトランジスターをご紹介しました。
第4章 テスターの活用法
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4-1ケーブルの断線チェックケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。
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4-2電池ボックスのチェック電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。
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4-3ACアダプターのチェックACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。
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4-4USB機器のチェックUSBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の略称で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つです。
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4-5スピーカーとイヤホンのチェックスマートフォンやパソコン、テレビやオーディオ機器の音の出口として、スピーカーやヘッドフォン、イヤホンなどがあります。ラジオを聞くにも欠かせない、音の出口となる部品の一つです。
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4-6オーディオアンプのチェック電子工作には欠かせない、あると便利なのがオーディオアンプです。
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4-7一石低周波増幅回路のチェックラジオは方式にもよりますが、同調・高周波増幅・中間周波増幅・検波・低周波増幅・周波数変換・局部発振など、高周波から低周波までの多くの回路から構成されており、チェックするにはそれなりの知識と経験が必要です。
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4-8さらにテスターを活用する方法(LEDチェッカー)LEDは色々なところに利用されていて、もはや生活には無くてはならない電子部品のひとつです。
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4-9さらにテスターを活用する方法(磁気チェッカー)磁石は身近にあり多くの電子機器にも利用されています。
第5章 使用上の注意点、トラブル対応
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5-1初心者が扱うと危険な測定大切なテスターを壊す最大の原因は、直流電流測定モードで電圧を測ってしまうトラブルです。
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5-2テスターの故障確認方法テスターも電子機器ですので、使用していると「測定値がおかしい」、「指針が振れない」、「電源が入らない」などの故障をすることが当然あります。
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5-3テスターとオームの法則「オームの法則」とは、電圧(V)[V] = 電流(I)[A]×抵抗(R)[Ω]の関係式です。
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5-4テスターの保守方法テスターは測定器ですので、安全と確度の維持のために1年に1回以上は、保守と校正の点検を行うことをお勧めします。
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5-5テスターの管理方法テスターは、測定に使っているとパネルやケースがどうしても汚れてきます。その汚れを落とそうと、シンナーやアルコール等で拭くことはしないでください。