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テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 テスターの活用法

4-5 スピーカーとイヤホンのチェック

■スマートフォンやパソコン、テレビやオーディオ機器の音の出口として、スピーカーやヘッドフォン、イヤホンなどがあります。ラジオを聞くにも欠かせない、音の出口となる部品の一つです。そして、オーディオ機器やラジオ、イヤホンやヘッドフォンのカタログと説明書には、「低周波出力インピーダンス4~8Ω(標準8Ω)」等の記載があります。また、スピーカーボックスを自作したり、ラジオキットを製作したときに、スピーカー本体裏面に「3W 8Ω」などの記述があることに気がつくと思います。これは、スピーカーの持つ電気抵抗のことで、インピーダンスと呼び単位はΩ(オーム)です。

■通常、電気抵抗とは直流に対する抵抗値のことであり、テスターでは直流の抵抗値を測定します。しかし、インピーダンスとは、オーディオ信号のような交流信号に対する抵抗値のことであり、周波数によりその値が連続的に変化します。スピーカーのインピーダンスも、入力する信号の周波数によりその値が変化します。すなわち、電流の流れやすい周波数と、流れにくい周波数があることになります。これらは、連続的に変化する値ですので、仕様として周波数特性グラフ(縦軸が電流、横軸が周波数)を表示するか、定格インピーダンスと言われる特定の数値を使います。定格インピーダンスとは、最も電流が流れる低音域での最小値です。このインピーダンスよりも下回ることは少なく、機器の設計はこの値を考慮すればよいことになります。

スピーカーとイヤホンのチェック

■市販されているスピーカーは、ほぼ永久磁石とコイルを使用したダイナミック型スピーカーです。永久磁石の作る磁界の中でボイスコイルに電流を流すとローレンツ力が発生し、コイルに取り付けた振動板が振動し音に変わります。ローレンツ力とは、磁場内で電流が流れている導体に、力が発生する現象です。物理で教わるフレミング左手の法則は、ローレンツ力の方向を示しています。中指が電流の方向、人差し指が磁界の方向、親指が発生する力の方向です。また、クリスタル型イヤホンとは、ロッシェル塩を使用したイヤホンの名称です。ところが、最近販売されているイヤホンは、クリスタル型イヤホンと書かれていても、圧電素子を使用したセラミック型イヤホンです。圧電素子に電圧を加えたときの伸縮で、振動板が振動し音に変わります。このセラミック型以外に、マグネチック型やバランスド・アーマチュア型イヤホンがあります。

■それでは、音がでなくなったときに、何を確認すればいいのでしょうか。スピーカーのチェックは、テスターを抵抗測定モードに設定し行います。正常であれば、定格インピーダンス付近の抵抗値を示し、「カリッ」や「ガリガリ」と音がします。たとえば、インピーダンス8Ωのスピーカーをチェックすると、直流抵抗7.6Ωと表示され、ほぼ定格インピーダンスであることがわかります。また、デジタルテスターでは音が非常に小さいため、アナログテスターで確認するほうがはっきりと聞き取れます。でも、なぜでしょうか(「2-7 アナログ向きの使い方」を参照してください)。イヤホンのチェックも、テスターを抵抗測定モードに設定し行います。プラグが付いたものは、ジャックに挿入すると調べやすくなります。セラミック型は、正常であれば無限大の抵抗値を示し「コツ」や「カリッ」と音がします。マグネチック型などは、抵抗値も表示します。スピーカー同様、アナログテスターで確認するほうがはっきりと聞き取れます。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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