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テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 使用上の注意点、トラブル対応

5-2 テスターの故障確認方法

■テスターも電子機器ですので、使用していると「測定値がおかしい」、「指針が振れない」、「電源が入らない」などの故障をすることが当然あります。その中でも最も多くわかりにくい現象が測定値の異常で、原因のほとんどが内蔵電池の消耗です。「2-4 抵抗(導通)の測り方」でも解説しましたが、アナログテスターの場合には、抵抗測定モードでテストピンを重ねて短絡(ショート)させ、ゼロオーム調整器を回して0Ω(ゼロオーム)にならないときには、内蔵電池が消耗している可能性があります。また、デジタルテスターでは、テストピンを重ねて短絡させたとき0Ω(完全に0.0Ωの表示はならない)、離して開放したときにオーバー表示(0.Lまたは0.F)が著しく異なるときにも、内蔵電池が消耗している可能性があります。

■最近の電池は液漏れ防止策が施されているようですが、テスターに限らず電子機器トラブルの多くは、内蔵電池の消耗または電解液漏れが原因です。電解液漏れの場合には、周辺回路や金属部分も腐食されていることが多いので、古い電池を外してきれいに拭き取ってください。また、腐食した金属部分が導通しないときは、目の細かい紙ヤスリで表面を研いてください。「5-4 テスターの保守方法」と「5-5 テスターの管理方法」でも説明しますが、長期間使用しないときには、内蔵電池を必ず抜いてください。筆者は、液漏れ発生防止のため毎年一斉にテスターの電池を交換しています。また、長期間使用しないテスターでは、内蔵電池を抜いています。

テスターの故障確認方法

■内蔵電池を交換しても「測定値がおかしい」、「指針が振れない」場合には、テスト棒のリード線が断線している可能性があります。テスト棒を収納するときに、無理にリード線を巻き付けたり折り曲げたりすると断線することがあります。確認方法ですが、測定端子からテスト棒を外します。テスターを抵抗測定モードにし、測定端子をビニール線などで短絡させます。このとき0Ωであれば、リード線が断線していることになります。また、テスト棒が外せないテスターの場合やリード線の断線部分を特定するには、「4-1 ケーブルの断線チェック」で説明したように、被覆のひび割れ、変色、部分的に柔らい状態、銅線露出など拡大鏡を使用して確認します。ケーブルの疑わしい箇所を、前後左右に折り曲げ抵抗値が変化するかをチェックします。断線していればテスターの表示は∞(無限大)、一時的に接触すれば抵抗値が変化します。その部分が、断線している箇所です。

■電源が入るのにテスターが動作しない場合には、テスターに内蔵されている保護用ヒューズが溶断している可能性が考えられます。ヒューズを飛ばしたときには忘れずに交換することをお勧めします。また、共用しているテスターでは、ヒューズを飛ばしたままかもしれませんので、ケースを開けてヒューズが切れていないかを確認してください。それ以外に、長期間使用していないテスターでは、モード選択用ロータリースイッチの接点が酸化し、接触不良になっていることも考えられます。このときには、ロータリースイッチを数回切り替え接点を復活させます。それでも正常に戻らない場合には、保証期間外であってもメーカーに相談することをお勧めします。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

三和電気計器『DCL31DR デジタルクランプメータ取扱説明書』(01-1507 2040 6011)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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