工具の通販モノタロウ テスターの基礎講座 一石低周波増幅回路のチェック

テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 テスターの活用法

4-7 一石低周波増幅回路のチェック

■ラジオは方式にもよりますが、同調・高周波増幅・中間周波増幅・検波・低周波増幅・周波数変換・局部発振など、高周波から低周波までの多くの回路から構成されており、チェックするにはそれなりの知識と経験が必要です。また、最近の電子回路はほぼICが使われていて、データシートを熟読して回路のチェックを行うことになります。特に高周波回路では、テスター以外にオシロスコープやスペクトラムアナライザーが必要になります。しかし、電子回路の基本であるトランジスターを使った増幅回路の動作を理解することは、テスターを使いこなす上でもとても重要なことです。よく使われる電流帰還バイアス回路の例として「一石低周波増幅回路」をご紹介し、その設計方法と動作チェックを解説します。

■電流帰還バイアス回路の抵抗値および電圧と電流の関係を記載した回路図です。各値をどのように設計するのかを簡単に説明します。

1)仕様を決めます。電源電圧VCCを5V、コレクター電流ICを1mA、利得Avを2倍(約6dB)とします。

2)負荷抵抗RLとエミッター抵抗REを計算します。Av = RL / REの関係があります。また、REの電圧降下は1V以上必要となります。たとえば、電圧降下を1Vとすると、IC = IEですので、RE = VE / IE = VE / IC = 1[V] / 1[mA] = 1[kΩ]です。また、RL = Av×RE = 2×1[kΩ] = 2[kΩ]となります。

3)R1とR2を計算します。

ベース電圧VBがR1とR2の分圧値となります。

また、V2 = VB = VBE + VE = 0.6[V] + 1[V] = 1.6[V]です。

V2と電源電圧VCCとの差が、V1になりますから、V1 = VCC - V2 = 5[V] - 1.6[V] = 3.4[V]です。

電流は、ベース電流IBより10~30倍流す必要があります。

20倍とすれば、R1 = V1 / I1 = V1 /(20×IB)、R2 = V2 / I2 =20×IBです。

たとえば、hFE = 150とすると、IB = IC / hFE = 1[mA] / 150 = 6.67[μA]ですから、R2 = 10[kΩ]のとき、

I2 = 1.6[V] / 10[kΩ] = 160[μA]で、160[μA] / 6.67[μA] = 24.0となり調度いい値です。

R1 = V1 /(V3×R2)= 3.4[V] /(1.6[V]×10[kΩ])= 21.3[kΩ]ですので、20kΩとします。

一石低周波増幅回路のチェック

■設計した一石低周波増幅回路のチェックは、電圧を測り電圧降下法で電流を計算します。すなわち、エミッター抵抗値が判っている場合、電流帰還バイアス回路のエミッター電圧を測定すると、IE = VE / REからエミッター電流が計算できます。また、コレクター電流もほぼ同じになります。このように、抵抗器の端子間電圧(降下電圧)を測定し、流れている電流を計算することができます。設計した回路をプチブレッドボードに実装し各値を測定してみると、設計通りに動いていることがわかります。簡単な回路ですし、値を色々変更して、テスターで測定してみてくだい。考えて試すこと、すなわち設計して測定することの繰り返しが、電子工作の基本だと思います。そして、回路図の電流や電圧が、必ず診えるようになります。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)

三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)

三和電気計器『DCL31DR デジタルクランプメータ取扱説明書』(01-1507 2040 6011)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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