テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第2章 テスターの使い方

2-2 テスト棒の使い方

■アナログテスターもデジタルテスターも、赤と黒のテスト棒をテスター本体の測定端子に差し込み使用します。ただし、ポケットタイプとカードタイプのテスターでは、テスター本体に配線ケーブルが直接接続されているものが多くあります。また、測定モードや測定レンジにより、差し込む測定端子が異なりますので注意が必要です。デジタルテスターでは、接続する測定端子をLEDで教えてくれるものや、間違った測定端子に接続するとエラーで知らせてくれるものもあります。いずれにしても、取扱説明書を確認することが、大切なテスターを壊さない秘訣です。

■一般的には、テスト棒先端の金属部分をテストピンと呼びます。また、測定端子に接続するプラグにつながっているケーブル部分をテストリードと呼びます。しかし、メーカーにより呼び方や商品名が若干異なるようです。テストするための探針ですので、プローブ(probe)と呼ぶのが適切ではないかと筆者は思います。赤と黒のテスト棒は、測定箇所にテストピンを押し当てて使用します。また、クランプメーターにも、テスト棒を接続する測定端子が付いている機種もあります。逆に、アナログテスターやデジタルテスターに、クランプセンサーを接続できるアダプターもあります。

テスト棒の使い方

■アナログテスターの場合には準備作業が必要となります。その一つが、メーターの指針を左端の零(0)位置に合わせる「零(0)位調整」です。メーターの要にあるネジが零位調整器で、ゆっくり回して指針を合わせます。基本的には一度合わせればいいのですが、環境により微妙に変化することもあります。

■もう一つが、「2-1 テスター各部の名称と役割」でも触れた、「ゼロオーム(0Ω)調整」です。ファンクションスイッチを抵抗測定モードに切り替えて抵抗値を測定するときに、赤と黒のテスト棒を短絡(ショート)させます。このときの抵抗値が0Ωですが、測定レンジを変更すると、この0Ωが少しズレていることがわかります。すなわち、使用する測定レンジを変更する度に、0Ω調整をする必要があります。少し面倒くさい気もしますが、アナログテスターで抵抗を測定する原理から理解できると思います。

■テスト棒は、短時間で行う測定のために測定箇所に当てるにはいいのですが、長時間の測定や手を離し他の操作をするときには非常に不便です。そのためには、ミノムシクリップやワニグチクリップなどの測定箇所を挟み込むクリップが便利です。ミノムシクリップは、被覆がありミノムシ(今ではあまり見かけなくなりましたが)の形に似ています。一方、ワニグチクリップは、持ち手の部分のみに被覆がありワニの口に似ています。日本では区別されていることが多いのですが、英国ではクロコダイルクリップ(crocodile clip)、米国ではアリゲータークリップ(alligator clip)と呼ばれています。また、電気クリップ(electrical clip)と記述しているものもあります。ちなみに、アリゲーターは、鼻面がやや丸く、口を閉じたとき下顎の歯は外からは見えません。一方クロコダイルは、鼻面がやや尖り、口を閉じたとき下顎の歯(前から4番目)が外から見えます。メーカー純正品もありますが、ミノムシクリップやワニグチクリップを購入して自作することをお勧めします。

【参考文献】

内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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