建築設備配管工事の基礎講座
空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第6章 配管に関するトラブル対応

6-1 配管の寿命と更新

中国語に”十全十美”という成句がある。これは”完全無欠”という意味であるが、世の中に「完全無欠」なる商品は存在しない。配管材料(特に金属配管材料)にも、「寿命(life)」があるが、これらの「寿命」は、「維持管理(メンテナンス)」、すなわち「保全」の程度によっても大幅に異なる。

(1)設備機器の保全の種類

「維持管理」は、単に「保全」と呼ぶこともあるが、”機器・設備に対して、その性能・機能を長期間にわたって安定して維持するために行う「処置」を行うこと。”である。また、それに容易に対応できる「度合・性質」を「保全性」と呼んでいる。一口に「保全」といっても多種多様な「保全」があり、これを一覧化したものが図-1の「保全の種類」である。

図-1 保全の種類

1.保全予防:MP(Maintenace prevemtion)
「信頼性」の高い「保全性」の良いシステムを計画・施工段階で作り込むこと。
2.予防保全:PM(productive maintenance)
「設備劣化」を防ぐために実施する精密点検・定期点検・保全などをいい、故障が起こる前に一部を予備品に交換する保全もこの中に入る。
3.事後保全:BM(break-down maintenance)
事故が起きてから、修理取替などの処置を講ずる方法で「予防保全」の考えが生まれるまではこの方法がとられていた。
4.改良保全:CM(corrective maintrnance)
保全活動の中で設備の悪いか所を積極的に改善していく保全方法のこと。

単にPMというと予防保全ではなく、生産保全を指すケースが多い。なお、最近では事故保全より予防保全を重視する傾向が強くなっている。
例)そろそろ配管やバルブの交換時期だなと予知メンテする。

(2)設備機器のバスタブ曲線(故障率曲線)

近来、建築設備技術者・維持管理者に、”建築の耐用年数は?”と質問すると、ほとんどの人から”15年です。”という答えが返ってくる。その根拠は「法定耐用年数」、すなわち税法上の固定資産の「原価消却期間」に基いたものである。「寿命」という概念は、小さな「部品レベル」では、比較的考えやすいが、「機器寿命」や「設備システム」となると大変複雑になる。「部品レベル」では、「物理的な寿命」が、そのまま寿命となるが、機能そのものの「機能寿命」が「物理的機能」よりも優先する機器もある。設備に使用される産業用機器は「消耗品」の取り換えなどを適切に行えば、「15年間程度」は故障なしに機能を維持するものも多い。ちなみに、その機器の「故障率」が時間に対してどのように変化するかを示したものが、図-2の「設備機器・材料類のバスタブ曲線(別名:故障率曲線)」である。

図-2に示すように、使用初期の「初期故障率」は高く、その後故障率が安定し「偶発故障率」となり、長期間使用後、漸次増大する「摩耗故障率」に至ることが分かる。

ちなみに、「初期故障期間」は通常1〜2年程度、「偶発故障期間」は通常15年程度、「摩耗故障期間」は、機器・設備稼働後15〜20年程度と言われている。

図-2 設備機器・材料類のバスタブ曲線(別名:故障率曲線)
(3)設備機器・配管材料の耐用性と耐用年数

建築設備は、多種多様な部品で構成され、各部品が有する「物理的な特性」に応じて、「機器」または「部位」の劣化が進み、最終的には「設備の機能障害」の発生、つまり「故障の発生」という形態を取る。

故障の発生は、上述の通り「初期故障(減少型)」・「偶発故障(一定型)」・「摩耗故障(増加型)」といった3つの「パターン」が基本となる。なお、設備更新(リニューアル)を実施する要因には、図-3に示す様に、設備機器の「物理的な要因」だけでなく、「経済的要因」や「社会的要因」の3つの要因が考えられる。

しかしながら、一般的には、「物理的劣化」を迎える前に、他の2つの要因で設備を更新する場合が少なくない。

図-3 設備更新(リニューアル)の要因
(4)配管材料の寿命

ところで、「配管材料の耐用年数」に関しては、さまざまな研究機関・関連協会・メーカーの目標耐用年数などの資料が発表されている。

当然、図-1中の「予防保全」や「事後保全」を実施すれば、「配管材料寿命」の延命化を図ることが可能であるが、配管材料の使用用途・使用環境・維持保全の有無などで、一概には言えないが概論すると以下のようになろう。

  1. 配管用炭素鋼鋼管(SGP):10〜15年程度
  2. 銅管(CU):20〜25年程度
  3. 一般配管用ステンレス鋼管(SUS):25〜30年程度
  4. 硬質塩化ビニルライニング鋼管:20〜30年程度
  5. ポリエチレンライニング鋼管:20〜30年程度
  6. 水道用硬質塩化ビニル管(VP):25年程度
  7. 排水用鋳鉄管:30年以上
  8. 耐火被覆二層管:20〜25年程度
執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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