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ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第3章 ねじの強さ

3-4 ねじにはたらく力

ここではねじにはたらく力をもう少し詳しく見ることにします。(この解説を理解するためには、高校の物理で学んだ力の分解と摩擦力、数学で学んだ三角比などの基礎知識が必要になります)3-1のねじの原理でも述べたように、ねじを締め付けることは、斜面に沿って物体を持ち上げることに似ています。 斜面の上にある物体には重力方向に荷重Wがはたらきます。荷重に対して水平な方向に力Fを加えることで、斜面に沿って物体を持ち上げることを考えます。力は方向と大きさをもつベクトル量であるため、つり合いの式を立てるために、WとFを斜面に平行な分力であるSとT、また斜面に垂直な分力であるRとNに力の分解をします。

ねじにはたらく力

ねじにはたらく力

斜面の摩擦係数をμとすると、斜面上の摩擦力fがTとは逆向きにはたらき、次式で表されます。

f=μ(R+N)

また、斜面に平行な力のつり合いにより、次式が成立します。

T=S+f

Tの式にS=Wsinθとf=μ(R+N)を代入して、さらにR=WcosθとN=Fsinθを代入して整理すると、次式が導かれます。

Fcosθ=Wsinθ+μ(Wcosθ+Fsinθ) F(cosθ-μsinθ)=W(sinθ+μcosθ)

上式をFについてまとめると、次式が導かれます。

F=W( sinθ+μcosθ / cosθ-μsinθ )

さらに分子分母をcosθで割ることで、次式が導かれます。

F= W(tanθ+μ / 1-μtanθ)

ここで斜面上で滑らない限界の角度である摩擦角をφとすると、μ=tanφより、加法定理を用いて整理することで次式が導かれます。

F=Wtan(φ+θ)

また、ねじを緩めることはこの逆で斜面に沿って物体を押し下げることになるため、次式が導かれます。

F=Wtan(φ-θ)

斜面がめねじ、斜面上の物体がおねじであるとすると、力Fはねじを締め付ける力に相当します。すなわち、おねじが緩まないということは斜面上の物体が滑り落ちないことを意味するのです。 ここで、F=Wtan(φ+θ)より、斜面の角度θよりも摩擦角φが小さなときにはねじが自然に緩むことになるため、この理論に基づいてねじのリード角θが決められます。ただし、摩擦係数は潤滑油の状態などにより変化するため、実際の状態を理論で導くことはなかなか難しいのも事実です。このような分野を研究する学問をトライポロジーといいます。

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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