ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第4章 ねじの材料

4-6 ねじのめっき

金属製品を調べているときに材質のところにクロメートやユニクロなどの文字を見かけることがあるかもしれません。いったいこれは何を意味しているのでしょうか。

一般に金属材料は成形後に表面をそのままの状態で製品化するのではなく、最終工程として何かしらの表面処理が行われます。表面にペンキで塗装を行うことも表面処理に分類されますが、 表面に薄い金属膜を作成して、硬さや耐摩耗性、耐食性などを向上するための処理として各種のめっきがあります。

電気めっきは、めっきとして使用する金属を陽極、めっきを施したい金属を陰極としてめっき浴に浸し、これに電気エネルギーを加えることで陰極の表面にめっきを析出させるものです。 このとき析出させる金属の違いによって、亜鉛めっきやニッケルめっき、クロムめっきなどがあります。

小ねじのめっきとして多く行われているのが、主にさびを防ぐために施され、安価であるため量産品に向いている亜鉛めっきです。 そして、先に述べたクロメートやユニクロはこの亜鉛めっきと関係しています。鉄系の材料に施すめっきとして亜鉛が用いられるのは、イオン化傾向が大きい亜鉛が溶解して鉄を錆から守ってくれるためです。 これだけなら亜鉛めっきを施した鉄鋼材料と呼べばよいのに、どうしてクロメートやユニクロなどという言葉が出てくるのでしょうか。 実は亜鉛めっきを施すことに加えて、さらに錆びを防ぐためにクロム酸塩溶液中に浸すことで被膜を処理しており、これをクロメート処理と呼んでいるのです。

ねじをはじめとする金属製品を手にしてみると、鉄系の素材でありながらも何となく表面が虹色を帯びた金色をしているものや青みがかった銀色をしているものあることを感じたことはないでしょうか。 この虹色を帯びたものを光沢クロメートといい、これを開発した会社の名称から別名ユニクロやユニクロームなどと呼ばれています。 もちろん、有名な衣料品店とは関係がありません。またもう一つの青みがかった銀色をしているものを有色クロメートといい、これを一般にクロメートといいます。 なお、耐食性はユニクロのよりもクロメートの方が優れています。より耐食性に優れた亜鉛めっきとして、表面が艶のある黒色をした黒色クロメートや深緑色をした緑色クロメートなどがあります。

なおめっきの種類にはこのほかに、電気を流さずにめっきをしたい材料をめっき液に浸すだけの無電解めっきがあり、この方法を用いるとプラスチック材料のような電気を通さない材料にもめっきが可能になります。

  • 六角ボルトユニクローム
  • 六角ボルトユニクローム
  • 六角ボルトクロメート
  • 六角ボルトクロメート

  • 黒色クロメートのねじ
  • 黒色クロメートのねじ
執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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