ねじの基礎講座
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
5-1 切削加工と塑性加工
本連載をここまでご覧の皆さまは、私たちの身の回りにはさまざまなねじがあることをご理解いただけたかと思いますが、意外と知らないのは「ねじはどのように作られているか?」ということです。 例えば、身近にある直径が4mmで長さが20mm、すなわちM4×20のメートルねじはどのように作られているかを想像できるでしょうか?
機械工作に関する知識がまったくない方に問うと、多くの場合、金属を溶かして型に流して作る、いわゆる鋳造という回答、 もしくは頭と部分とねじ部をそれぞれ別々に切り出して接着剤もしくは溶接で接合するという回答などが多く出されます。もちろん、これらの方法でもねじを作ることはできます。 しかし、この大きさのねじを購入するとき、ステンレス製でも1本十円もしません。ねじを安価に作るためには、短時間にできるだけ数多くのねじを作る必要があります。 いったいどのような加工法が考えられるでしょうか?
これはねじを作ることに限りませんが、一般的な金属を加工法として、板や棒を刃物で削る切削加工、折り曲げたりして成形する塑性加工、加熱して接合する溶接、 そして金属を溶かして型に流し込む鋳造などがあります。 これらのうち、ねじの加工法としてあげられるのは、金属の棒状や線状を切削してねじを作る切削加工と、金属を押しつぶしてねじを作る塑性加工です。
切削加工と塑性加工、どちらでもねじを作ることはできますが、両者にはいくつかの違いがあります。 すなわち、切削加工は棒状や線状を削りだすことから、加工中には削りくずを発生しながら、元の材料よりも小さな寸法のねじを作りだします。 一方、塑性加工では元の材料を叩いてつぶすことでねじを作り出します。 このとき、削りくずは発生せず、ねじの寸法は押しつぶした分だけ太いものになります。 また、切りくずが発生しないことから、金属内部の繊維状金属組織であるファイバーフローを切断しないため、耐摩耗性に優れるという特長もあります。
切削加工でねじを製造する方法には、手動で操作できる工具であるタップやダイスによる方法、汎用的な工作機械である旋盤による方法、数値制御で作動するNC旋盤による方法、 またねじ切り専用の工作機械であるねじ切り旋盤による方法などがあります。 塑性加工でねじを製造する方法には、パンチとダイスの間で線材を押し潰してねじの頭部を成形する圧造、 ねじ山が刻んである工具であるダイスを線材に押し付けてねじ山を成形する転造などがあります。以下の項目でそれぞれについて、詳しく説明していきます。
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『ねじの基礎講座』の目次
第1章 ねじのキホン
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1-1ねじのはたらきねじは私たちの身の回りに数多く用いられている代表的な機械要素です。家電製品やパソコン、また乗り物や建物などにも、さまざまな種類のねじが用いられています。
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1-2ねじの歴史ねじが誰によっていつ頃発明されたのかに関する明確な答えはありません。ただし、ねじの特長の一つである螺旋は、紀元前に発明されたアルキメデスの揚水ポンプや
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1-3ねじの規格ねじ、歯車、ばね、軸受などの機械要素は、各部分の寸法などが規格で規定されることで、幅広く互換性をもつものとして広く用いられています。たとえば、ねじの場合には、
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1-4ねじの生産ねじが私たちの身の回りに数多く存在していることは、あたりを見回すだけでわかるでしょう。それではそのねじはいったいどのくらい生産されているのでしょうか。
第2章 ねじの種類
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2-1ねじの各部名称ねじは円筒や円錐の面に沿って螺旋状の溝を設けた形状をしており、円筒や円錐に溝が外側にあるものをおねじ、内側にあるものをめねじといいます(図1)。JISで規定
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2-2ねじ山の種類直角三角形を丸めて円柱をつくり、これを丸めていくとその斜面は曲線を描きます。この曲線をつる巻線といい、ねじの溝はこれに沿って形成されています(図1)。
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2-3ねじ頭部の形状とくぼみ直角三角形を丸めて円柱をつくるとつる巻線ができました。ねじの原理を考えるときには、再度、直角三角形に戻して考えます。ドライバーを回してねじを締めた後にそれを
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2-4ねじのくぼみのいろいろねじ頭部のくぼみの形状には十字穴付きやすり割り付き以外にもさまざまな種類があります。アメリカのカムカー社が開発したトルクスは、ねじ頭部のくぼみが六角形の星形をし
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2-5タッピンねじの種類おねじの締結には必ずめねじに相当するものが必要だと思われるかもしれませんが、実はめねじがない個所で用いられるねじも存在します。
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2-6六角ボルトと六角穴付きボルトの働きと締め付け力めねじをもつナットと組んで使われるおねじの総称のことをボルトといいますが、ねじとボルトの厳密な違いはありません。
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2-7ナットの種類ボルトとともに用いられるめねじをもつ部品の総称をナットといいます。代表的なナットは外形が六角形の六角ナットです。
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2-8座金の種類と働き座金は小ねじ、ボルト、ナットなどの座面と締め付け部との間に挟んで用いる部品であり、形状、機能、用途などに応じて、さまざまな種類のものがあります。
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2-9止めねじの種類と形状止めねじは、ねじの先端を利用して歯車やプーリーなどの機械部品を軸に固定する場合などに用いられるねじです。
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2-10ユニファイねじの規格と種類ユニファイねじは、メートルねじがミリメートルで長さを表したのに対して、インチで長さを表したねじです。
第3章 ねじの強さ
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3-1ねじの原理直角三角形を丸めて円柱をつくるとつる巻線ができました。ねじの原理を考えるときには、再度、直角三角形に戻して考えます。ドライバーを回してねじを締めた後にそれを手で
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3-2ねじの伸縮ねじの伸縮と言われて、ねじが伸びたり縮んだりするのかと思われるかもしれませんが、ねじに限らずどんな金属も必ず伸び縮みします。
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3-3ボルトとナットの強度区分規格品のボルトを選定する場合には、JISで強度区分が規定されているので、この意味を理解しておくとよいです。
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3-4ねじにはたらく力ここではねじにはたらく力をもう少し詳しく見ることにします。
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3-5ねじを回す力ねじを回す力は物体を回転させる力のモーメントと見なすことができます。
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3-6ボルトの締め付けボルトを選ぶ場合には、六角形や六角穴などの頭部形状だけでなく、小ねじを選ぶ場合と同じく、必要なねじの呼び径やピッチなどの数値にも着目します。
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3-7ねじの緩みと緩み止めどんなに強度をもつボルトやナットがあっても、それらを適切に締め付けることができなければ適切な締結力は得られません。
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3-8ボルトの締付け法必要な大きさのねじを選んで適切な工具で締付けることは、少し慣れれば誰にでもできそうなことに思えますが、ねじを適切に締め付けることができたかどうかは、どのようにして判断するのでしょうか。
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3-9ボルトの締付け工具使用したい寸法形状のねじやボルトを選定できたとして、その締め付けを行う場合には、適切な締付け工具を選定して、適切な方法により締め付けを行う必要があります。
第4章 ねじの材料
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4-1鉄鋼材料ねじに限らず、私たちのまわりにある多くの工業製品は金属材料で作られており、その中でも鉄鋼材料は比較的安価で入手でき、強度や粘り強さを兼ね備えているため、多くの場面で用いられています。
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4-2合金鋼材料炭素鋼の機械的性質をさらに向上させるために、クロム(Cr)やモリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)などの元素を添加したものを合金鋼といいます。
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4-3銅材料銅は電気や熱を伝えやすいことや錆びにくいこと、また加工しやすいなどの性質をもち、歴史的には鉄より古くから用いられてきました。
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4-4アルミニウム材料とチタン材料アルミニウムは密度が鉄の約3分の1と軽量であり、銅と同じく電気や熱を伝えやすいことや加工しやすい性質をもつ、白色光沢の金属です。
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4-5プラスチック材料プラスチック材料は、金属材料よりも軽いことや錆びないこと、表面処理なしで使用できることなど、さまざまな特徴をもつ樹脂材料であり、工業製品に幅広く用いられています。
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4-6ねじのめっき金属製品を調べているときに材質のところにクロメートやユニクロなどの文字を見かけることがあるかもしれません。いったいこれは何を意味しているのでしょうか。
第5章 ねじの作り方
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5-1切削加工と塑性加工本連載をここまでご覧の皆さまは、私たちの身の回りにはさまざまなねじがあることをご理解いただけたかと思いますが、意外と知らないのは「ねじはどのように作られているか?」ということです。
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5-2ダイスによるおねじ加工切削加工でおねじを加工するねじ立て作業には、ダイスを用いる方法があります。 ダイスは棒状の工作物におねじを刻むための刃をもつ食いつき部をもつ円盤状の工具であり、ダイス回しと一緒に用います。
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5-3タップによるめねじ加工切削加工でめねじを加工するねじ立て作業には、タップを用いる方法があります。 タップはドリルなどで穴あけをした円筒形の内側にめねじを刻むための刃をもつ食いつき部をもつ工具です。
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5-4旋盤によるねじ切り旋盤は円筒形の工作物を主軸に取り付けて回転させ、これにバイトとよばれる切削工具を接触させて切削加工を行う代表的な工作機械です。
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5-5ねじ切り盤によるねじ切り旋盤によるねじ切りは、旋盤によってできるいくつかの加工のうちの一つでした。一方でねじ切りに特化した工作機械があり、これをねじ切り盤といいます。
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5-6圧造によるねじの加工小ねじの成形には切削加工よりも塑性加工、すなわち切りくずを出さない加工が多く用いられています。
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5-7転造によるねじの加工圧造を終えた段階では、ねじの頭部形状はできているものの、肝心のねじ山がまだできていません。 ねじ山を成形するためには、ねじ山が刻んである工具である転造ダイスの間に材料をはさんで転がします。
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5-8ナットの加工ボルトとナットはおねじとめねじの違いがある通り、製造する工作機械は大きく異なります。そのため、ボルトとナットのどちらも製造している工場はあまり見かけません。
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5-9ねじの検査ねじの作り方は切削加工だけでなく、圧造や転造などの塑性加工によって、大量生産が可能になりました。
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5-10ねじの製図機械や建築物などを設計するときには、その設計図にその形状を詳細に描く必要があります。